こうすれば速くなる(かも)!
470級の帆走性能を科学する2014/Oct/16
J-SAILINGで連載していました『こうすれば速くなる(かも)!470級の帆走性能を科学する』を、誌面の都合でWeb版J-SAILINGへ引っ越しいたしました。引き続きご愛読ください。(編集部)
こうすれば速くなる(かも)!470級の帆走性能を科学する(4、J-SAILING 107号からつづく) レポート/金沢工業大学 増山 豊
7-2 メインセールのキャンバー(ドラフト)による変化
メインセールのドラフト(キャンバーの深さ)による性能の変化を図7-5に示す。風向が25°、30°、35°の場合について、ドラフトの大きさを10%~18%の範囲で変化させたときのCX、CY、CMzの変化を示している。ドラフトの大きさは、メインセールの前縁の高さ25%、50%、75%における断面の値の平均値である。なお、この間ジブのトリムは変更せず、メインセールのツイスト角も17°~22°の範囲に保った。
図より、いずれの風向であってもCYの値はドラフトとともに大きくなることがわかる。一方、CXは14~16%のドラフトの時に最大値を示すことがわかる。CYの値は小さい方がいいので、このことよりドラフトは14~15%程度とするのが適切と考えられる。筆者が「風神」というセールダイナモメータ船を用いて、クルーザーの実船レベルの実験を行った結果[2]では、10~12%のドラフトが適切であることがわかった。この最適値の違いは、もともとディンギーのセールのキャンバーが、クルーザーのものより少し深めに作られているためではないかと考えられる。
図中に示す写真は、風向が30°の場合で、ドラフトが11%、14%、18%時のメインセールの様子を示している。この写真は模型のデッキ上に置いた動画用のWebカメラでブームの下から撮影したもので、解像度はあまりよくないがセールトリムの参考になるのではないかと思う。
7-3 メインセールのツイストによる変化
メインセールのツイストによる性能の変化を図7-6に示す。風向が25°、30°、35°の場合について、ツイストの大きさを12°~32°の範囲で変化させたときのCX、CY、CMzの変化を示している。ツイストの大きさは、メインセールの75%の高さにおける翼弦線と、ブームのなす角度で表している。なお、この間ブームはほとんど船体中心線上にセットしており、ドラフトはほぼ14%一定であった。また、前節同様にジブのトリムは変更していない。
図より、いずれの風向であってもCYの値はツイストとともに小さくなることがわかる。一方、CXは風向によって傾向が異なり、風向が25°の場合はツイストが小さい方がよく、35°の場合はツイストが大きい方がよいことがわかる。風向35°の場合は7-1節に示したように、真風向で50°~60°とクローズホールドから少し落した角度であり、ヒールも最もきつくなるところなので、すでにツイストを大きくして走っている艇も多いと思うが、理にかなっているものといえよう。風向30°の場合、CXが最大になるのは、ツイストが20°~25°の範囲である。前述の「風神」によるクルーザーの場合は風向30°のデータしかないが、適切なツイストは約15°であった。この違いもディンギーとクルーザーのドラフト量の違いによるものと考えられる。
また図中に、風向が30°の場合で、ツイストが12°、20°、32°時のメインセールの様子の写真を示すので、参考にしていただきたい。 (以下、次号)
参 考 文 献
[2] MASUYAMA, Y., TAHARA, Y. ,FUKASAWA, T. and MAEDA,N.: Database of Sail Shapes versus Sail Performance and Validation of Numerical Calculation for the Upwind Condition, Journal of Marine Science and Technology, JASNAOE, vol.14, No.2, pp.137-160, 2009.


