<はじめに>
運良く梅雨の晴れ間となった6/12(土)、13(日)の2日間、今年度第1回目となる「ジュニアユースセーリング・シーマンシップアカデミー」が葉山港にて開催されました。
この事業は2009年度から2024年度まで、ジュニアユースアカデミー委員会が主管して、ジュニア及びユースセイラーを対象にシーマンシップ(航海術)への理解を深めることを目的として、オリンピック代表選手や代表候補選手を講師として全国各地で行われていたものです。
今年度からは新たにJSAFに発足した育成委員会が主導する形となり、各クラス協会やオリンピック強化委員会等との連携強化が図られています。
さて、第1回となる今回のアカデミーは関東水域のチームを対象としましたが、参加の多くは地元葉山町セーリング協会の選手、保護者、指導者の皆さんとなりました。
講師は府川(旧姓:宇田川)真乃氏、育成委員会委員長でもある中村公俊氏、そして私、山本悟の3名です。
参加者の内訳は、OP級44名、420級20名、保護者・指導者74名の計138名ですが、2日目の最終全体ミーティングでは受講者名簿に記載のなかった方も加わり、200名近くの方が受講されました。
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江の島を背に集合写真
<制限のある練習>
最初の全体ミーティングでは、練習方法の一例として「制限のある練習」を紹介させていただきました。
これは、コース練習において方向転換(タック・ジャイブ)の回数を制限する練習法です。
例えば、1回だけならレース海面の両サイドまで行かなければなりません。いわゆる1本コースです。マーク回航直前の方向転換は回数に含まれません。2回なら両サイドに行くまでに1回方向転換することができ、もう1回はマークアプローチの方向転換になります。
シーマンシップ(航海術)を航海の安全を守る技術とするなら、事前に自然の変化を読むことは必須です。これは、セーリング競技の戦略(ストラテジー、方向転換の根拠)にも当てはまります。この練習方法は、制限を設けることで選手自ら戦略上の気付きを得られることを期待しました。
ミーティング後の海上練習、私が担当した420級は2日目の午前中までの間、「制限のある練習」を行いました。

山本コーチのシーマンシップ講習
ここで分かったことは、戦略に主眼を置いた練習方法により、思いのほかスタート技術が向上したことです。スタート後の不利な位置を避けるため、結果的にポジショニングが非常に良くなりました。これも、制限があることで得られた効果と思われます。
29艇にもなったOP級Aクラスは、女子470級で2020東京オリンピック候補選手であった府川コーチが初アカデミー講師として担当しました。

座学中の府川コーチ
いきなりの大人数かつ選手間の競技力差があるなか、声をかけ合う、返事をするなどコミュニケーションの取り方から、ご自身のOP経験を活かしたスプリットポールとセイルシェイプの関係や、姿勢と乗艇位置など専門的なコーチングが行われ、全体の雰囲気作りにも気を配っておられたのが印象的でした。
OP級Bクラスは7名と少なめでしたが、中村委員長が担当して他のクラスと同様に「制限のある練習」を試した結果、次のとおり驚きの成果を得られたようです。
1.全体的にライン付近から揃ってスタートできるようになった。
2.海面を遠くまで観察して風の良し悪しを考えるようになった。
3.クローズホールドのアングルを気にするようになった。

OPBクラスを担当した中村コーチ
どのクラスも今回の講習テーマ「シーマシップ→安全な航海→戦略」を「制限のある練習」で習得する取り組みによって、副次的に良いスタートや良いスピードが大切であることにも気づきが及ぶ。コーチングの工夫によって生まれる主体的な取り組みと成長を垣間見たコーチ冥利に尽きる瞬間でした。

講習に聞き入る参加者たち
<エピソード1>
OP級、制限のある練習の中でタックはダメだけどジャイブは良いよね?と、クローズ帆走のコースをジャイブで方向転換した選手がいたこと。
指導者の説明不足をついた発想の柔軟性に驚きつつ、ジャイブも勘弁してとお願いしました(笑)
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レース練習中のOPセイラーたち
420級、海上練習でのこと、ワールドを直前に控えて向上心に溢れる選手からセーリングを見てほしいとの希望があり、僅かなアドバイスを与えました。

山本コーチのアドバイスを受ける420選手
その内容は、正しいボートバランスとセイルパワーがボートスピードを生み出し、スピードから得られる揚力がクローズホールドの上り角度を向上させるという基本的なことですが、明確な目標設定は、円滑なコミュニケーションと技術的な実行力を発揮させて劇的な成果をもたらしました。

海上指導中の府川コーチ
<最後に>
この度、アカデミー事業が復活したことは大変喜ばしいことです。
40年以上前にオリンピックを経験した身として、講師をさせていただきながらシーマンシップ(航海術)の重要性を強く実感しました。
当時の自分に知識があれば、結果はもっと良い方に変わっていたと確信します。
今回の環境をセッティングしてくださった葉山町セーリング協会をはじめとする関係者の皆さまのホスピタリティに心より感謝申し上げます。
全体ミーティングでは、規模の大きさ、参加していただいた皆さまの学ぶ意欲の高さ、熱心な指導者・保護者の皆さまの熱量に緊張もしましたが、私自身また一つステップアップできたように感じます。
皆さまの今後ますますの素晴らしいセーリングライフを祈念してレポートを終了いたします。
(レポート:1984ロスオリンピック代表、アカデミーコーチ 山本悟)
