ジュニアユースセーリング・シーマンシップアカデミー in 富山県射水市2024/Sep/05


participant

アカデミーに参加したユースセーラーたち


令和6年7月20日(土)、21日(日)の2間、ミレニアミ国体と称された「2000年とやま国体」の会場、富山県新湊マリーナにて富山アカデミーが行われました。この会場は、国体競技名がヨットと呼ばれた最後の場所です。翌2001年宮城国体からセーリングへと変更になりました。

受講生は、アカデミーの翌週に全中(全国中学校ヨット選手権:高松市)を控えた射水市立射北中学校ヨット部員9名と、同じく市内の中学校に通う男子生徒1名の計10名。それに、翌月にインターハイ(全国高等学校総合体育大会:和歌山市)を控えた富山県立新湊高校ヨット部員15名と合わせて25名です。そこに両校顧問3名、富山県セーリング連盟指導者3名の計6名に、富山大学ヨット部員も加わり総勢50人前後になりました。

講師は私、山本悟と470&スナイプセイラーとして活躍する高木克也コーチが務めさせていただきました。また、アカデミー委員会からは山田州子氏が全体のマネジメントを担当していただきました。

Single Hand

シングルハンド種目の講習


初日20日は、まだ梅雨明け前の熱気と湿気に包まれた中で始まりました。午前9時に全体ミーティングを行い、アカデミーの趣旨であるシーマンシップ(航海術)をテキストに基づき説明させていただいた後、グループをシングルハンドとダブルハンドに分け練習内容を確認しました。それから、午前10時の出艇時には上空に薄黒い雲が結構な速さで流れ、海面は不安定な南から南西の岸風が吹いていました。射北中の先生からは「これが西風に変わると強風になる」と伺い細心の注意を払いました。

シングルハンドを担当した私は、シーマンシップ(航海術)と競技との共通点として、コース選択の最優先となる戦略=自然の変化を読むことを目的としたコース練習にしました。それは、あえて上マークを等距離に左右2個打ち、受講生が2通りの上下コースから選択できるようにしました。練習後は、各受講生に選択理由をプレゼン(発表)してもらいました。

debriefing

一人一人からプレゼンテーション


ダブルハンドを担当した高木コーチは、技術を中心とした練習に取り組みました。高校生の420と大学生の470とスナイプが、セーリング練習から回航練習、スタート練習へと移行しました。その間にも個別にコーチボートから、技術面はもちろんのこと、下記アドバイスを行いました。
・指示待ちをしない
・自分の頭で考え行動する
・リーダー艇は役割を考える

そして、県連指導者により瞬時に的確なスタートラインを設定後、OP、ミニホッパー、ILCA6は予定通り1回目のコース練習を終えました。しかし、その頃に風向が西に変わり始め、中学生主体ゆえに、指導者のシーマンシップとして全艇が戻れる風域のうちに練習中止を決めました。ダブルハンドは高校生と大学生のため、その後吹き上がる中でも午前中の練習時間をフルに費やしました。

早めに上がったシングルハンドはプレゼンを行い、戸惑いながらも、それぞれが自分の言葉で伝えてくれました。その中でインターハイILCA6に出場予定の女子受講生(高2)は、見事な風の読みとともに具体的に説明してくれました。彼女は全中に優勝経験のある射北中ヨット部卒業生でした。

吹き上がる風に苦労したダブルハンドのミーティングは、熱心に説明する高木コーチに受講生たちの表情も真剣そのものでした。西風へと変わった午後は、風向風速の変化が激しい中、両グループともに午前中の経験を活かした練習を行い、着艇後は再びプレゼントとミーティングを行い終了しました。

2日目の最終日、中学生は午後から全中の壮行会と積み込みのため、午前中のみの練習となりました。高校生は、午後3時から積み込みの手伝いということで、午後1時半まで練習を延長することになりました。

Double Hand

ダブルハンドの講習


シングハンドは、初日と同じ戦略=自然の変化を読むことを課題としながら、全中と同じトライアングルコースを設置し、本番を想定したレース練習を行いました。この日は風があるところと無いところの差が激しく、下級生がトップを取ったり大逆転があったりと、自然の変化が及ぼす影響を実感したようです。

中学生が戻った後は、ILCA6高校生3艇のセーリング練習を行いました。前日に素晴らしいプレゼンを披露してくれた女子受講生(高2)のほか、男子受講生1艇(高1)も射北中学ヨット部卒業生でした。この2艇はアドバイスの反応も良く、感覚と技術は確かなものを感じました。

ダブルハンドも初日の振り返りの後、レース練習を行いました。私が確認できた範囲では、全艇がスタートライン付近からスタートできていました。高木コーチから教わった技術と、自分の頭で考えて行動することの効果が表れているようでした。この日も高木コーチは海上で個別にアドバイスを送り、着艇後のミーティングは、大学生と午後5時にまで及びました。

debriefing
また、この日はJSAF馬場益弘会長が能登半島大震災へのお見舞いに富山県新湊マリーナを訪れてくれました。アカデミー実施中の海上を始め全中壮行会において、県連関係者、保護者、選手たちに励ましのお言葉をかけていただきました。

富山県セーリング連盟の皆様、この度は大変お世話になりました。地元中学から高校へと競技を続けられることは、非常に効率の良い競技力向上の取り組みに感じました。しかも、射北中学ヨット部が2000年富山国体後に創部されたと伺い驚きました。地元国体開催を一過性のものに終わらせない関係者の努力の賜物です。

最後に、2日間のアカデミーを通して女子受講生が積極的に映りましたが、それは決して男子受講生が消極的ではなく、富山県男子特有の「奥ゆかしさ」と知りました。近い将来、それが実績とともに全国に認識されるでしょう。(富山アカデミー講師 山本悟)