ドラゴン級世界選手権(6月9日~17日、ポルトガル・カスカイス、参加70艇)に参加した青山篤JSAF参与からレポートが寄せられた。世界のドラゴン級の現状とは。(J-SAILING編集部)
このところ、わが<YEVIS>(JPN50)はヨーロッパのレースでトップ10やファーストフィニッシュなど好ましい成績が出ていたので、「トップ 20」という壮大な目標を立てて今回の世界選手権に挑戦いたしました。
しかし、プラクティスレースでは上マーク3位(その後はみな帰港して不明)、本番の第1レースで25位とまずまずのスタートだったのですが、その後、想像以上にセーリングスキルの高いフリートの集団に巻き込まれ、抜け出すこともままならず、20数年前のレースを始めたばかりのころに戻ってしまったような惨憺たる順位に落胆し、自信喪失のまま苦戦が続きました。
レース期間中の1週間を通して海の状況はほぼ同じで、出港時のハーバー周辺はほぼ無風か微風。途中まで曳航されてレース海面へ向かい、風が入ってくると解き放たれて帆走。スタート周辺は20ノット 前後の風があり、潮流もあります。上マークまで2.5マイル、上マーク周辺に到達するころには30ノットオーバーの風となり、波高4メートルという結構なコンディションの連続で、多数のマストの折損やケガ人が出て、病院送りとなったクルーも数名出ました。早朝に新しいマストに建て替える作業はレース終盤まで見かけられました。
レース中盤からは Andy Beadsworth率いるTUR 1212、Anatoly Loginov率いるRUS 27、 伝説のセーラーLawrie Smith 率いるGBR 815の争いとなりました。
わが<YEVIS>チームもようやく上位をたたき出し、復活の兆しとなりましたがもはや「時すでに遅し」の感はぬぐえません。
迎えた第8レースでコミッティボートサイドからスタートし、ポートタックに返す絶好のタイミングに恵まれ、皆が驚くほどの爆走に続く爆走で上マークを2位で回航し、その後ロシアチームにかわされるものの最終レグGBR 803(総合18位)チームとフィニッシュへのポートアプローチの15分間の競り合いを制し3位でフィニッシュ、「ついにやりました!」。ワールドでのングルフィニッシュは私にとっては思いもしなかった夢の実現で、あたかも優勝したかのような喜びでありました。そのレースでの1位から5位は総合成績10位以内のチームであり、ついにヨーロッパの本場で通用するセーリングスキルに到達できたのかもしれないという思いのした瞬間でした。
1990年に我が国のドラゴン級を復活させようと活動を始めた当時は世界中でドラゴンを愛好する好事家たちの道楽の感のあったこの世界も、20数年のうちに大きく状況が変わりました。今や 世界で最もアクティブで最も大きなフリートとして誰もが認め、憧れるクラスにまで発展しているのです。
世界各国で90年代に、私のようにドラゴン級を復活させようと活動した人たちが同時多発的にいたということなのだと思います。
今回の参加艇70艇の構成をみると 純粋なアマチュア(Corinthian)20艇、多くのタイトルを獲得した名だたる有名セーラーやプロセーラーが自らオーナーとなり凄腕のプロを雇いコーチも雇ってコーチボートも備えてキャンペーンを張っているチームが20艇、ナショナルチャンピオン・クラスのそれなりのセーリングスキルを持ったオーナーがプロを雇って参加しているチームが30艇(私もこの中に入ります)の合計70艇という構成で、大人がそれなりのレガッタに参加して楽しむのも大変な時代が到来してしまっているのが本場の状況です。これらのことが我が国で語られることも少なく、オリンピックばかりに目が向けけられているのは、我が国のセーリング界の未成熟の表れのように感じられ少々寂しい思いのした今回の遠征でした。
ドラゴン級のセーリングシーンは想像以上に進歩、変革しており、活躍しているのは30代後半から50代前半の一流のセーラーがほとんどで、60代後半以上のセーラーはめっきり減っしまいました。かつてあこがれたレジェンド諸氏はまったく姿が見られなくなりました(30年近くも経ったのですから当たり前ですね)。
私もそろそろ今後のセーリングライフを考える時が来たようです。
我が国も次世代のドラゴン・セーラーの活躍に大いに期待して夢を継続していってほしいと思います。
妻の永年にわたる理解と献身的な協力なしには、ありえなかった私のドラゴン・セーリングの活動であったと心から感謝している次第です。(今さら何を言っても遅い!)
2017年6月 JPN 50 <YEVIS> Bocci Aoyama
大会サイト
http://www.cncascais.com/index.php?option=com_rib&view=item&id=975&catid=2&Itemid=157&lang=en
蛇足/ドラゴン(Dragon)は1929年にデザインされたキールボートで、1948年から1972年まで、24年間オリンピックのセーリング競技で正式種目とされていました。今日でもなおヨーロッパをはじめ世界で愛される艇種として存在し続けています。厳格なクラスルールが適用され続けており、古い艇であっても最新モデルの艇に対して十分互角に戦い続けることが可能です。(https://www.facebook.com/japandragons/から抜粋)