矢部洋一フォトエッセイ
コリンシアンたちの実力― NYYCインビテーショナルカップより2015/Oct/08

ニューヨークヨットクラブのニューポート基地“ハーバーコート”

ニューヨークヨットクラブのニューポート基地“ハーバーコート”

アメリカン・ヨッティングの中心地、ロードアイランド州ニューポートのレースシーズンは、例年5月に始まり、9月いっぱいで主なイベントをほぼ終える。

ニューポートハーバー、そしてナラガンセット湾を臨む豪壮で風格あるニューヨークヨットクラブ(NYYC)のクラブハウス、“ハーバーコート”はこの期間、月にいくつものレースイベントをこなし、大忙しだ。

今年のシーズンを締めくくる9月のメインイベントは、2009年から同クラブが2年に一度主催をしている「ローレックス・NYYCインビテーショナル・カップ」だった。

インビテーテショナル・カップは、NYYCが互恵関係を結ぶ世界の名門ヨットクラブを中心に、招待状が送られたクラブだけが参加することのできるイベントだ。参加クラブのリストには、頭にロイヤルを冠した、名だたるヨットクラブがずらりと並んでいる。日本には第一回からJSAFに招待状が送られていて、これまで毎回参加を続けてきた。

もうひとつの特色は、カテゴリー1、つまりプロではないセイラーだけが参加できるという決め事にある。ここに、あまり聞きなれない言葉が出てくる。彼ら(NYYC)は、このレガッタに参加資格を持つセイラーのことを、アマチュアではなく、コリンシアンと表現する。これ、英和辞典を引いても、“コリントの”とか“コリント様式の”と書いてあるばかりでさっぱり意味が分からない。

そこで、NYYCのメンバーにその意味するところを聞いてみると、「プロではないけれど、同様のパッション(情熱)をセーリングに持ち、高いレベルのスポーツマンシップを持つ人っていう感じかな」とのお答えだった。なあるほど。

インビテーショナル・カップにやって来る選手たちのレベルは非常に高い。世界の名門ヨットクラブがそれぞれその威信をかけて挑戦に来るのだから当然なのだが、過去にオリンピックを初め、世界のメジャーレガッタで活躍し実績を残してきたというスキッパーやクルーがぞろぞろいる。しかも、クラブ内で予選会を行って遠征チームを決め、準備を整えてやって来るというところもある。
だから参加チームの実力は伯仲して、やる方も見る方も実に面白い。とりわけ、上位半分に入るチームの競り合いは激しく、レースごとに目まぐるしく順位が入れ替わる。

今年の大会の日本(JSAF)代表チームは、関西の雄「サマーガール」チームだった。第一日目第一レースでスタートから飛び出し、圧倒的なトップを取るという滑り出しで、現場の注目を一気に集め、一目も二目も置かれた。その後アップダウンを味わいつつも、馬場益弘オーナー率いる「サマーガール」は全12レースを戦って総合5位という見事な成績を収めた。

インビテーショナル・カップ第一回大会で、植松眞オーナー率いる「エスメラルダ」が獲得した総合3位に続く、歴代2番目の結果である。
コリンシアンの世界で、日本のセイラーの力を証明できるというのは、なんとも嬉しいことだ。 (写真と文/矢部洋一)

今年の第4回ローレックスNYYCインビテーショナル・カップには、14カ国から19のヨットクラブチームが参加

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JSAFを代表して参戦した関西ヨットクラブの「サマーガール」は総合5位と活躍

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