第56回パールレース戦勝記2015/Jul/29

Team Gefion。中央が中島和浩オーナー(写真提供/レース実行委員会)

Team Gefion。中央が中島和浩オーナー(写真提供/レース実行委員会)

第56回パールレースで総合優勝を遂げたTeam Gefionからレースレポートが届きました。(編集部)

Team Gefionは、パールレース歴10年の若輩チームではありますが、毎回楽しく参加させていただいております。とは言え2007年には鹿児島火山レース・座間味レース・台湾レース出場のため、そして2013年はTRANCE PACIFIC YACHT RACE出場のために参加できてはいませんが。

どの艇でもレースでのゲン担ぎ、あるいは習慣があると思います。我がチームでは、若手クルー、ロートルクルーそれぞれにパールレースでの習慣が根付いております。

若手は、7月第1週に神奈川県油壺から三重県志摩ヨットハーバーへ回航します。そして、レース前日は早朝に伊勢神宮参拝を終え赤福氷でクールダウン、その後志摩ヨットハーバーでの船底掃除で気持ちを一つにします。

一方ロートルクルーは、長良川で鮎の塩焼きを食べながらそれぞれが持ち寄った情報を元に作戦会議を行います。

また、約20日間、志摩ヨットハーバーに艇を置くには、管理担当者が必要となります。それは、Team Gefion名古屋支部の作業です。

今年の回航は、雨には降られましたが問題なく完了いたしました。

しかし、その後台風11号の影響でヨットハーバーに風、うねりが入り込んだため支部長が現地入りしました。「いや、大変です。うねりが横から入り桟橋ごと揺れています」から「いや大丈夫です。大丈夫です」に変わるまで24時間の間に3、4時間ごとに連絡が入りましたが、台風は艇を傷めることなく通過してくれました。回航と艇の管理、大変な思いをしてもなぜかまた参加したくなる不思議な魅力のあるレースなのです。

長良川作戦会議の結果、今年は、最短距離のコースを選択。

スタート後フレッシュウインドが入り次第、和具大島と鳴神島にヘディングを向けると、海上保安庁巡視船から「貴船の無事な航海を祈ります」との海の男の激励に感謝の返礼をいたしました。

定置網をかわし利島に向けバウダウン。風は西風、順風。スピンネーカーに風をいっぱいにはらみ、ボートスピード8~10ノット。黄昏時、双眼鏡を見ながら16艇を確認。今回の作戦成功を確信しつつ、プロパーコースをひたすら走り続ける。

深夜、御前崎の灯台が見え始め、毎年恒例の波との戦いが始まる。見える範囲の他艇はヘッドセールをジブにチェンジ。まだまだ行けると思いきや、まず1回目のブローチング。すぐに立ち直るも、10分後に2回目のブローチング。今度はうまく行かずスピンポールを破損、仕方なくスピンセールをダウンし、ジブアップ。ナーバスになりながら上空を見ると満天の星。気を取り直し、ジャイブの繰り返し。すると「明るくなったらスピンポールを直します」との声がクルーからあがった。

夜が明けギブス状態のポールを見ながら全員気合いの入れ直し。利島MAG 0度、40ノットの利島吹き下ろしを走り、大島の風早へバウダウン。風早を過ぎた後、風が落ちスピンアップ。ジャイブを繰り返し、フィニッシュラインに到達した。

ちなみに食事についても少々書かせていただくと、準備も調理も若手クルーの仕事。レース中ごはんを炊く、味噌汁はダシ取りからが基本。パールレースでは西瓜とメロンを冷えた状態で出す。A5飛騨牛ステーキ丼が特別メニュー。うまい食事は、集中力を格段に上げる効果があると信じています。

今回のパールレースで今までと何か変わった事をしたわけではありません。ただ、クルーの集中力が以前よりも増しGefionに勝利の女神が微笑んでくれたのだと。いやGefion自身が女神だから、デンマークの国引き神話のごとく勝利を引き寄せてくれたのだろうと思います。(Gefionオーナー/中島和浩)

フィニッシュラインへ向かうGefion(写真提供/レース実行委員会)

フィニッシュラインへ向かうGefion(写真提供/レース実行委員会)