ジュニアユースセーリング・シーマンシップアカデミー 神奈川県・葉山2024/Feb/27



2月23日(金)から24日(日)の2日間、神奈川県は葉山港を活動拠点とする葉山町セーリング協会の中学生・高校生が操る420級を対象として、今年度第13回目となるジュニアユースセーリング・シーマンシップアカデミーが開催されました。講師を務めたのは私、中村です。

Junior Youth Academy in Hayama

葉山アカデミー集合写真


葉山港は施設や設備がコンパクトに整い、使用者には著名なセーラーが多いので情報に溢れており、海面となる相模湾は水温が高いうえに風にも恵まれています。何といってもロケーションが最高で、湘南地域はマリンスポーツの聖地といえます。そんな最高の環境の中で活動されている葉山町セーリング協会の特徴のひとつに、OP級は中1で卒業というしくみがあります。また、自主自立を目指して子どもたちの活動形態や目標設定はそれぞれに任されています。必然的に子どもたちは多様性に富んでおり、彼らの高いコミュニケーション力は話下手な講師を少なからず助けてくれました。

Junior Youth Academy in Hayama

4艇での帆走練習


さて、講習1日目は、先日までの春を思わせる陽気が一変し、小雨が降る中、真冬の寒さと時折15ktを超える北寄りの良い風が、私たちのシーマンシップに試練を与えてくれました。出艇前、今回の練習テーマを参加者それぞれに確認していき、全ての参加者が3月に重要な大会を控えていることが分かりましたので、私の中では、ボートスピードに関連する技術力の向上をメインテーマとして、今後の練習への取り組み方のヒントになるような話を盛り込んでいくことを決めました。

Junior Youth Academy in Hayama

逗子湾に向かってのクローズ帆走


海上練習は、選手たちからのリクエストに応えて、スピード練習、マークラウンディング、レース練習の順にトレーニングを進めていきました。海上での取り組みを観察して分かったことは、基本的な技術は身についているが、風の変化量が大きい場合に技術が追いついていないということです。中には、協会の仕組みもあり、この時期にはまだ420級という艇種に慣れていないというチームや選手もありました。これらを踏まえて、朝昼晩のタイミングで振り返りと次の海上練習に向けたイメージ作りに十分な時間を割きました。

Junior Youth Academy in Hayama

陸上でスキッパーへの指導


講習2日目は、絶好のコンディションに恵まれました。前日からの雨は上がり、北風がそのままの風速で残ってくれたので、振り返りから得られたイメージをそのまま海上で試すことができ、選手もコーチも自分たちの成長と課題をしっかりと確認することができました。

2日間をとおして、参加者たちにとってタイムリーであろう情報を発信し、彼らと様々なキャッチボールをする中で、特に自分たちの技術力を発揮する理由が自然の変化であり、自然の変化を先読みしてタイミングを合わすことが大切であることを繰り返し確認しました。また、先読みや判断の材料となる情報源は多岐にわたるため、セーリングスポーツの特性を捉えたうえでコミュニケーションを意識することが突破口になるということを伝えました。

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海上練習での上マークアプローチ


コミュニケーションを図る相手は、1つには他者です。他者とは相棒(同乗者)であり、コーチや仲間、時にはライバルたちです。他者とのコミュニケーションは自分を豊かにしてくれます。2つには道具です。道具は常にセーリングの状態を乗り手に伝えてきます。道具の声に耳を傾けることは言わずもがな管理を怠ると最悪なタイミングでトラブルになります。

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陸上で体の使い方を指導


3つには自然です。自然との一体感こそがセーリングの醍醐味であり楽しさです。最後は自分自身です。いつでもポジティブにそしてアクティブにありたいものですが、過去に縛られたり未来に不安が募ると思考も行動もフリーズします。今この瞬間を楽しみ、失敗を恐れずチャレンジすることが成功のきっかけになることを一つのアドバイスとして伝えました。

Junior Youth Academy in Hayama

他者とのコミュニケーションも積極的に


要するに、人間力を高めることと競技力を磨くことは密接に関係しており、このサイクルこそがシーマンシップであると分かります。これは、自分自身の経験に加え、本アカデミー事業に関わってくれているコーチ陣から学んだことでもあります。

2日間の講習を通じて一番うれしかったことは、参加してくれたジュニアユースセイラーたちが本当に楽しそうにセーリングしていたことです。もちろん、真剣に取り組む中で、それぞれが自分たちの課題に真摯に向き合ってくれた上での最高の笑顔です。その証拠に、短い期間の中で目に見える具体的な成長を全員に確認することができました。きっと自分たち自身でも実感しているはずです。

Junior Youth Academy in Hayama

中村講師による講習


おわりに、2日間のアカデミーが円滑に運営できるようサポートしてくださった協会コーチの皆さま、そして、最高のホスピタリティで迎えてくださった保護者の皆さまに心より感謝申し上げるとともに、葉山町セーリング協会がセーリング界をリードしていく存在の一つとして、ますます発展することを心より祈念して、第13回葉山アカデミーのレポートとします。(レポート:アカデミーコーチ 中村公俊)