9月3~4日、滋賀県大津市、琵琶湖大橋西岸のたもとに位置する真野浜水泳場において、ジュニアユースセーリング・シーマンシップアカデミーが開催されました。
台風12号が鹿児島から長崎に向けて北上している最中の開催となりました。
コーチはアトランタとシドニーオリンピック代表の佐々木共之、ロサンゼルスオリンピック代表の山本悟が務めました。
参加者は、真野浜セーリングクラブのジュニアセーラーと膳所高校の1、2年生、それに近隣クラブのジュニアセーラーとそれぞれの保護者、指導者が加わりました。
真野浜アカデミーにはユニークな点が3つあります。
その1つはトッパー級がメインに使われていることです。トッパーは軽量で艤装もシンプルなため、艇庫から小人数で出せるし、出艇までの時間を要しません。また、沈起こしも簡単な上に、弾力性のあるハルは接触時の損傷を和らげてくれます。今回のように参加者の技量差がある場合、安全面においては指導者に安心感をもたらせてくれます。
練習は佐々木コーチ中心にエネルギッシュに進められました。
状況の変化にフレキシブルな対応が必要であることを意識できるよう、先頭艇を追いかけるフォロー・ザ・リーダー、様々なコースの回航練習、ゲートスタートやフリースタートを織り交ぜたレース練習等、多種多彩なものでした。
さらに陸上では、適切なハイクアウト姿勢とコントロールロープ類の使い方、参加者から質問のあったバイザリーのシミュレーション、果てはサッカーのブラジリアン体操を応用したウォーミングアップ、クーリングダウンに効果的なストレッチの要領にまで及びました。
こうした取り組みがなぜ必要であるかについても練習前のブリーフィングで、ホワイトボードやプロジェクターを使って分かりやすく説明されていたので、湖上での練習効率は著しく向上しました。また、練習後のミーティングでは、スマートフォンで撮った動画を大型スクリーンに映しながらの解説があり、セーラーたちの意欲や興味を刺激しながら次の課題へとステップアップしていきます。
このようにコーチによってもたらされる情報は水辺まで数メートルというビーチの上で行われます。湖上を目前にイメージを膨らませたまま即座にセーリングを行える環境、これが2つ目のユニークさです。セーリングへの理解や技術の向上をセーラーたち自身が実感していた証拠に、講義終了後にも多くのセーラーが佐々木コーチに詰め寄り、最終日は新幹線に乗るタイムリミットぎりぎりまで質問責めでした。
そして3つ目のユニークな点はアカデミー期間中の食事です。
調理師免許を持つ指導者と保護者でつくられた食事が格別なのです。常に空気の澄んだ湖畔で食べられることもあり、美味しいご飯と琵琶湖特産の食材を取り入れたおかずは絶品で、コーチ陣も毎食おかわりしてしまいました。感謝感謝です。
さて、最後になりましたが、このジュニアユースセーリング・シーマンシップアカデミーの趣旨であるシーマンシップとは何でしょうか?
教本を開くと「航海術にすぐれていること」とあり、その意味として「安全に自分の力で1つの航海を終えるための技術や知恵、経験などを持ち合わせていること」とあります。航海も競技も同じシーマンとして、指導する側はセーリング技術の獲得に合わせ、安全への配慮や自然への興味関心、結果以上に競技に一生懸命に取り組む姿勢も評価になるでしょう。
アカデミーのコーチをさせていただいてから、毎回ジュニアユースセーラーの純粋さ、吸収力の高さ、成長の早さに驚かされます。それ故、常にシーマンシップを基礎とした評価が、将来高い目標に向かう心の支えになると実感しています。(レポート/山本 悟)