ジュニアユースセーリング・シーマンシップアカデミー
室蘭リポート2016/Oct/11

ジュニアユースセーリング・シーマンシップアカデミーに集まった室蘭のセーラーたち

ジュニアユースセーリング・シーマンシップアカデミーに集まった室蘭のセーラーたち

9月24~25日、北海道の室蘭市B&G海洋センターにおいて、ジュニアユースセーリング・シーマンシップアカデミーが開催されました。

室蘭アカデミーの受講生は室蘭と小樽の小中高校生14人、指導者12人、保護者8人の34人、種目はOP、レーザーラジアル、シーホッパーSR、FJと多彩でした。2日間とも雨の予報だったので、瀬戸内セーラーの私が北海道の洗礼を受けることはある程度覚悟していたのですが、蓋を開けてみれば期間中ほぼ晴天に恵まれ、冬支度で臨んだ私の心配は杞憂に終わりました。

私にとっては初めての室蘭遠征だったのですが、室蘭の街並みはとても印象深く、私の心に残りました。特定重要港湾に指定される室蘭の練習海域は、自然と人工物のコントラストが独特な雰囲気をもたらしています。白鳥港とも呼ばれる室蘭港はハーバーから見て左側をぐるりと防波堤で囲まれ外海からの波をブロックしており、向かいには鉄のまちと呼ばれるとおり、製油や鉄鋼、造船などの工場群が圧倒的な存在感を放っています。港をロシアなどからの大型船舶が悠然と入港してくる風景もさることながら、夜には港を跨いでいる東日本最大のつり橋「白鳥大橋」や工場群が背にする山に連なる発電用風車のライトアップなどと相まって、日本屈指の夜景を楽しむことができます。

東日本最大のつり橋「白鳥大橋」を背景にアカデミーは開催された

東日本最大のつり橋「白鳥大橋」を背景にアカデミーは開催された



さて、肝心の講習会です。晴天は良かったのですが、あいにく風には恵まれず、2日を通じて1m/s前後の微風に終始しました。微風なら私に任せてくれと言いたかったのですが、沖縄アカデミーでの後藤コーチの『答えを教えないでください』に倣って、私も年を重ねてからは留意している『教えすぎない』というテーマに殊更重きを置いて臨んだ結果、その縛りが想像以上に思考と行動を弛緩させてしまい、講習の入りはきっと歯切れの悪いものであったと猛省しています。そんなこともあって講義中には我先にと発言が飛び交うという雰囲気ではありませんでしたが、私の問いかけには物怖じすることなく率直な意見を子どもたちが返してくれたのが救いでした。

OPのセールを調整する中村公俊コーチ

OPのセールを調整する中村公俊コーチ



微風に終始した海上練習でも受講者たちの集中力が途切れることはなく、与えられたドリルにも真剣に取り組んでくれました。私が感じた北海道セーラーたちの特徴は、陸でも海でも非常に落ち着きがあるということです。これは雄大な北の大地が育んだものなのか? 指導者の教えなのか? 一見受け身のようですが、そもそもセーリングは、風や潮流といった目に見えない現象の変化と、目には見えますが常に形や大きさを変える波という現象を捉えて、最適に操船することを求められる受け身のスポーツです。競技ともなれば対艇スキルといった別の要素も加わりますが、いずれにせよこれはセーリングというスポーツの特徴に他なりません。まさにシーマンシップそのもの! これまでにも優秀なセーラーを輩出している室蘭ですが、今後もジュニアユースセーラーの成長がとても楽しみです。

海上練習を見つめる中村コーチ

海上練習を見つめる中村コーチ



最後になりますが、前述した特定重要港湾に指定される特殊な海域でありながらもしっかりとセーリングエリアが確保されており、拠点となる海洋センターは多くの艇を守りながらアフターセーリングにはバーベキューなどで子どもから大人までが交流できるスペースを提供しています。これら海陸のセーリング環境が整備されるまでのご苦労は容易に想像がつきます。今回のアカデミーでもお世話になった福田会長、武者理事長をはじめとする室蘭の皆さんに敬意と感謝を表します。(レポート/中村公俊)