Pioneering Research Voyage by Ocean Research Project
海上の浮遊物を採集する〈SAKURA〉の航海2014/Aug/28

JSAF環境委員会の旗を掲げる〈SAKURA〉のNicole

JSAF環境委員会の旗を掲げる〈SAKURA〉のNicole

平成26 年6月22日未明、横浜ベイサイド・マリーナにクルーザー〈SAKURA〉が入港した。アメリカ西海岸、サンフランシスコ湾を4月27日に出港してから7000マイル、無寄港で63目のことだった。

乗船していたのは外洋セーラーMatt Rutherfordと科学者のNicole Trenholmの2人。彼らの目的は海に浮遊しているプラスチックゴミの採集と分析で、今回の航海は前回の北大西洋での採集航海に続く2回目の試みだった。

サンフランシスコを出てから前半は貿易風に乗り快調な航海をつづけたが、後半、とくに日本に近づいてからは梅雨の影響もあり、荒天に遭遇し苦労した。航海中、生活に使う水は海水から汲み上げ、通信に使う電力も水力発電を利用した。船体は驚くほどきれいで、ハルに1カ所の擦り傷がある程度で、長旅を思わせないものだった。

航海中、細かい網目のネットを海に浮かべ、その中に入ってくるプラスチックゴミを採集した。アメリカに帰国した後にスミソニアン研究所でそのゴミを分析する予定。今回は東京大学ともコラボレーションを試みる計画である。

海上での浮遊物の採集は彼らの目的の半分であり、残りの半分はこれらを持ち帰り分析することにある。今回の航海では1リットルボトル10本、500mlボトル35本分のプラスチックゴミを採集した。

この行動のそもそものきっかけの1つは、アメリカは北欧等に比べリサイクルの意識が低く、遅れているということに端を発している。

ファストフード店でコーヒーを飲んでも、おそらくは10回は優に使えるであろうプラスチック製マドラーを使い捨て、1回使っただけでゴミにしてしまう。プラスチックは後の世代までゴミとして残り、環境へのインパクトも大きい。海上に浮遊しているプラスチックは鳥や魚が誤って食べてしまうこともあり、海洋汚染のみならず、生態系への影響も大きい。

まだ分析の結果は出ていないが、採集したゴミ自体、前回の北大西洋での採集物とそう変わりはなさそうとみられている。しかしながら、太平洋のほぼ中心部分にはGyreと呼ばれるテキサス州と同じ位の大きさの渦巻き状の大きな流れが潮流の下にあり、前回の北大西洋での採集に比べ、比較的大きなプラスチックがその辺りに吸い寄せられるように溜まっているという特徴が指摘されている。

分析結果は秋以降に出る予定だが、6年後にはオリンピック、パラリンピックが東京に来る中、JSAF環境委員会では今後の分析の結果に注目していきたいと思っている。(永井真美JSAF環境委員長)

Ocean Research Projectについて http://oceanresearchproject.org/

Gyreに関する資料映像  https://www.youtube.com/watch?v=h6i16CrI8ss

 

前回の北大西洋航海で採集したプラスチックごみのサンプルを見せてくれたMatt

前回の北大西洋航海で採集したプラスチックごみのサンプルを見せてくれたMatt



〈SAKURA〉の入港を祝し、ベイサイド・マリーナで乾杯。河野博文JSAF会長(左端)、永井環境委員長(左から3人目)、Matt(同4人目)、Nicole(同5人目)、神奈川県連の貝道和昭会長(右から2人目)

〈SAKURA〉の入港を祝し、ベイサイド・マリーナで乾杯。河野博文JSAF会長(左端)、永井環境委員長(左から3人目)、Matt(同4人目)、Nicole(同5人目)、神奈川県連の貝道和昭会長(右から2人目)