2023 光アカデミー2024/Jan/09


9th Hikari Academy

9回目となる光アカデミーの参加者たち


はじめに

 2023年も押し迫った12/28(木)、29日(金)の両日、本州最西端山口県の南東部瀬戸内側に位置する光市、山口県スポーツ交流村ヨットハーバーにて光アカデミーが行われました。
 山口県は、2023年鹿児島国体において10種目中9種目にエントリーし全種目入賞、天皇杯皇后杯を獲得した国内有数の強豪チームです。そのような競技力の高いチームのアカデミーにおいて、改めてシーマンシップの考え方を共有しました。

9th Hikari Academy

開会式後、シーマンシップについて講習する山本コーチ


講師と受講生

 光市は、アカデミー事業を運営するジュニア・ユースアカデミー委員会、中村委員長の地元でもあります。今回は、その中村委員長サポートの元、わたくし山本悟(ロサンゼルスオリンピック代表)が講師を務めさせていただきました。
 本アカデミー期間中は山口県セーリング連盟恒例の年末合宿中(12/27~30)のため、受講対象のジュニア・ユースセーラー以外にも、下記の選手と指導者が加わり総勢40名の大所帯になりました。

・YAMAGUCHIジュニアアスリートアカデミー(タレント発掘・育成事業)ジュニア&ユースセーラー男女5名(全てボードセーラー)
・光高校、聖光高校ヨット部3年生男女4名(全てスポーツ推薦での大学進学予定者)
・山口大学ヨット部男女13名(OBOG2名含む)
・光高校OBOG大学生男女4名(全てスポーツ推薦での大学進学者)
・鳥取県セーリング連盟男女7名(ユースセーラー3名、社会人セーラー3名、指導者1名)
・山口県セーリング連盟指導者男女6名(県外指導者2名含む)
・アカデミー講師1名

9th Hikari Academy

海上練習初日、年末とは思えない穏やかな光の海


美しく広い練習海面

 冬場で空気が澄んでいるからでしょうか? 練習海面に日光がキラキラと反射する美しさに幾度も心を奪われます。その海は周防灘と呼ばれ、南側は広く豊後水道まで続いています。そこから吹く南風は安定しており、延々とセーリングできます。東側には祝島と小祝島が大小兄弟のように並んでいます。西側には大分県の国東半島が見え、意外と九州が近いと思わせます。
 ハーバーから出てすぐの左側は、白く長い砂浜と松林が続く室積海岸です。日本の白砂青松と渚百選に選ばれています。そこから東に室積半島が伸び、北から東の陸風に変化をもたらします。出て右側は人工のコンクリート護岸が続きますが、その先に大水無瀬島が我々を見下ろしています。この島は南から西の海風と波に影響を与え、強風時に岩で波が砕ける様は恐怖感を募らせます。今回、この島が地元大手企業の持ち物だと知りました。このように美しく変化に富んだ自然状況は、セーラーに様々な刺激と情報を与えてくれます。

9th Hikadi Academy

会場となったスポーツ交流村


航海術と自然とのコミュニケーション力

 期間中は大陸からの移動性高気圧に覆われ、年末にしては温かい2日間でした。午前中は僅かに残る北寄りの岸風、昼過ぎからは南寄りの海風に変化した軽風で練習は行われました。グループは470級、420級、ILCA6、テクノ293(ボードセーリング)、山口大学に分かれ、それぞれ指導者がつきセーラーとのコミュニケーションを取りました。練習内容は、中村委員長が設置する長短のコースにて、シンプルにスタート練習とレース練習を反復しました。経験差により山口大学は別メニューです。私は、それらを全体的に観察させてもらいながら、「航海術」と「自然とのコミュニケーション力」の両面からシーマンシップの考え方をミーティングで伝えました。

「航海術」
・セーリング強豪国の欧州は大航海時代より500年以上の歴史を持つ
・未知の大海原から生還するための技術
・歴史から蓄積された技術とプライド
「自然とのコミュニケーション力」
・航海経験の少ない日本人向けの解釈
・セーリング競技のコース戦略(自然の変化を読むこと、ストラテジー、大局)に合致
・ジュニア・ユースセーラーのレスポンスが良い(集中力が高い、楽しそう、積極的、良く考える、想像力が働く)

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2日目も軽風となった海上練習


9th Hikari Academy

海上練習合間の分科会風景


経緯とまとめ

 私が参加したロサンゼルスオリンピックは、1984年開催の40年前、10大会前になります。当時の記憶と3年前の東京オリンピックを比較しますと、どちらもレースが進むにつれて徐々に生気が失われ、パフォーマンスが下がる傾向に共通点を感じました。
 更に遡りますと、最初の東京オリンピック開催が1964年の60年前、15大会前です。当時日本の選手強化に関わった欧州の関係者から、日本が通用しなかった理由を「シーマンシップの欠如」との指摘があったと文献で読みました(文献名は失念)。
 そして、2012年からアカデミー講師をさせていただいている私も、シーマンシップの知識に乏しく、コーチングは経験則による技術中心でした。その反省から、シーマンシップについて文献を探り、東京海洋大学・杉崎昭生名誉教授「新シーマンシップ考」より、自然とのコミュニケーション力という解釈がコース戦略にも合致し、受講対象のジュニア・ユースセーラーに伝わりやすいと考えました。今は、その解釈を練習方法「アクティブプラクティス」とともに解説しています。
 最後に、今回は大学生と社会人セーラーに多くの指導者が加わり、多様化したアカデミーになりました。正直なところ、再びシーマンシップを伝えきれていない印象を持ちました。2024年は、競技レベルと対象に関係なく、普遍的なシーマンシップの核心に触れるアカデミーを目指します。(レポート・山本悟)

9th Hikari Academy

多種多様な参加がある中、テクノ293の選手と情報交換する山本コーチ