6月23日にIOC(国際オリンピック委員会)が主催する「オリンピックeスポーツシリーズ」の決勝がシンガポールで開催されました。
オリンピックeスポーツシリーズ・セーリング決勝(YouTube)
セーリング競技のファイナリストは、3月~5月に開催された全8予選の各1位に与えられる権利を勝ち取った8名と、世界ランキング1位の男女、開催地枠のシンガポール選手の計11名です。日本からは各予選5000人以上の戦いを勝ち抜いた古川悠航選手(FUNe_Yuko)、木暮俊貴選手(FUNe_KG-R)が参戦。この大舞台で3レース目には日本人選手がワンツーフィニッシュを決めるなど最後まで目が離せない素晴らしい戦いが行われました。
惜しくもメダルレースを逃しましがたが、古川悠航選手(FUNe_Yuko)は総合6位、木暮俊貴選手(FUNe_KG-R)は総合7位と健闘しました。優勝はフランスのTIM CARPENTIER選手(UOL Pepito)です。
横浜国立大学ヨット部所属で決勝進出者の中で最年少、20歳の古川選手と、東京都立大学ヨット部OBで、日本のeセーリング界第一人者の木暮選手のお二人に、この大舞台での交流やリアルレースとの違いについてeSailing委員会としてお聞きしました。
古川悠航選手(FUNe_Yuko)
・交流について
僕たちはライブの大会は初めてだったので、実際に海外のeセーラーに会うのも初めてでした。これまで多くの試合で鎬を削ってきたトッププレイヤーたちはどのような人たちなのか、非常に楽しみでした。僕に至っては英語もろくに話せないので仲良くなりたいと思う反面、コミュニケーションを取ることができるか、不安な気持ちもありました。実際のところ、彼らは容姿こそ屈強な方ばかりでしたが、内面はとても優しい人たちばかりで英語が話せない僕にも沢山話しかけてくれ、伝えようとしていることを聞こうと努力してくれました。英語が話せればもっと色々話せたのに、もっと仲良くなれたのに‥後悔はありますが数日間を共にして多くの思い出を彼らと作ることができました。長年画面越しでしか知らなかったプレイヤーと初めて対面でコミュニケーションをとる時の感動は忘れられないほど刺激的なものでした。
・リアルレースとの比較について
レース前の緊張感は似たようなものがありました。ステージ入場前は、クラス旗が上がった時と同じようなヒリつくような緊張感でした。レース中の緊張感はリアルもバーチャルも同じで、ほとんど違いなくレースに集中できました。
気持ち的には、他のeセーラーが、バチバチというより、「みんなで頑張っていこうぜ」という感じで笑顔だったのでそれに励まされて緊張はあったものの比較的リラックスしてレースを迎えられました。
木暮俊貴選手(FUNe_KG-R)
・交流について
セーリングファイナリストとの交流はとても楽しく、本当に皆やさしかったです。特に印象的だったのは、僕が普段ノーヘルプでプレイしていることをほとんどのプレイヤーに聞かれ、その度に驚かれたことです。今回の結果は残念でしたが、もう少し胸を張っていてもいいのかなと思いました。
他競技のほとんどの日本人ファイナリストとお話しする機会があり、母国語で会話できることに安らぎを感じました。やはりどの競技も予選は厳しいものだったらしく、他競技とはいえ戦友のように感じました。
・リアルレースとの比較について
今回の大会に限らず、eセーリングは基本的に直前まで練習ができます。ですが、練習をしすぎて疲れてもいけません。自分にあった練習量を見極める必要があります。今思えば、今回は現地到着から大会前日までの練習量が少なすぎたかもしれません。
準備としては他に、前日にしっかり睡眠を取ったり、少し前から体調管理に気をつけたりですが、これはリアルセーリングと同じだと思います。
僕はeセーリングのほうが自信があり、今年は好成績が続いているおかげで、レース中は堂々としていられました。しかしオリンピックイベントという、リアルレースでは経験したことのない規模の大きさから、レース前はかなり緊張しました。
また、普及にはどんなサポートがあるといいかなども聞いてみました。
■ゲーム(eSailing)の存在を知らなかったり、知っていてもここまで競技化されていることを知らない人も多いはずです。ここまでの規模になっていることを知れば、やってみたいと思う人が増えると思います。江の島や葉山マリーナ等にVRIのブースを置いたり、OESであればイベントのブースを作って多くの人の目に届けるという取り組みができれば、より日本にeセーリングを普及させられる。ナショナルチームの活躍やeSailing全日本大会が開催されていることをもっと大々的に広報してほしい。
■すでにある大会、新しく始まったジュニアチャレンジなどをこれからも長く続けてほしいです。特に全日本選手権はオフライン開催(オンライン参加も可)にしてほしい。
コロナ禍、クラスによっては自主的にVRIを用いたそのクラスのセーラーたちの大会を開催していたところもあるようなので、VRIに興味のあるクラスの協会などと連携して、クラスごとのeセーリング大会を開催していくのもおもしろいかもしれません。
お二人はeセーリングのナショナルチームメンバーとしても活躍し、日本のeセーリングを牽引してきました。この大舞台での経験や日頃の活動から日本でのeセーリング普及拡大や更なる発展に希望を膨らませています。素敵な経験をしたお二人、そしてお二人に続くeセーラーの皆さんを応援しています。
(JSAF eSailing委員会)