2021年1月5、6日、セーリング競技強化拠点の一つである山口県スポーツ交流村(光市)で、今年最初のシーマンシップアカデミーが開催されました。年末、年明けと大寒波に襲われましたが、ちょうどその狭間、講習はこれ以上ないコンディションに恵まれました。
受講生は地元光高校と聖光高校ヨット部の皆さん、それに岡山県からも邑久高校ヨット部の皆さんが参加してくださいました。講習のサポートや座学にも積極的に参加いただいた先生方を含め、総勢30人ほどのアカデミーとなりました。
光市は、東京五輪49er代表の小泉維吹くんをはじめ、多くの名セーラーを輩出してきた伝統の海域ということもあり、何となくプレッシャーのかかる中、ダブルハンドは470級ナショナルチームメンバーとして活躍した山田真コーチ、シングルハンドはロス五輪470級代表の山本悟が務めさせていただきました。
■初日
初日、まずは受講生の特長や課題を見極める必要があり、簡単なブリーフィングを行った後にすぐ出艇となりました。
澄み切った青空の下、風光明媚な室積海岸を眼前に、午前中は光特有の振れの多い軽風下、ウォーミングアップも兼ねてシンプルなセーリング練習を行い、それぞれの課題を見出していきました。
午後には少し安定した北西風が10ノットまで上がる中、ダブルハンドは、昼休みの振り返りでも明らかになった課題や質問事項を海上で個別に確認しながら練習が進められました。シングルハンドは、セーリングの基本技術である「ボートバランス、セールトリム、ボートハンドリング」をアレンジすることによりパフォーマンスが大きく変わることをマンツーマン形式のコーチングにより確認していきました。
開講直後にはおとなしかった受講生たちも、最後のミーティングでは徐々に積極性が見られるようになり、多くの受講生が2日目に向けての具体的なセーリングイメージを説明できるまでになりました。
■2日目
2日目は、冬型の気圧配置が強まる中、昼には北西風が最大20ノットを記録しました。
どのような状況においても山田コーチは一切声を荒げることなく的確なアドバイスを送り続けていました。瀬戸内ということもあり、まだ強風に不慣れなチームが多い中、はじめはスピンホイストにとまどい、下マークをオーバーランしていたチームが、最終的にはルームを意識しながらきれいに回航できるようになっていました。コーチ力の重要性と若者たちの無限の可能性を垣間見た瞬間でした。
シングルハンドは1人を除いて初めて経験する風域だったため、とにかくスピードに慣れること、楽しむことを伝え、残る強風経験者には、スピードが出ていても基本技術は常に存在することを意識づけしました。
最後に紹介させていただくのは、アカデミー終了後に中村委員長に送ったLineの内容です。コロナ禍にあり世の中は決して安定した状況にはありませんが、人間の力とセーリングの可能性を信じて来週末も私はおそらく海の上です。
『トイレでふと閃いた。
アカデミーでのコーチングは、コーチとして極めて貴重な体験だ。
毎回、終わってから余韻が残るというか、複雑な気持ちになる。
とても納得がゆくコーチングができなかった……
それは、毎回、環境も人(受講生、指導者、関係者)もレベルも変わるからだ!
まさにジュニア&ユースの中で、シーマンシップ流布目的に強化より普及優先となる。
今回もわずか3人にもかかわらず、余裕で乗れる選手と乗れない選手が混在し、双方に平等な満足度を与えないといけない。
上手くシーマンシップとリンクさせるなんて、とても余裕がない。
この他、受講生は小学生から高校生に及び、種目もシングルからダブル、スキフに至る。
これを全国でさせてもらえるなんて、コーチ冥利に尽きるだろう。
今さらながら、改めてコーチングを考えさせられる刺激になっている。
出来ることなら、もっともっと、受講生に感動を与えられるコーチングに高めたい。
その時は、徹頭徹尾シーマンシップ流布の目的を果たせているだろう。』(セーリングコーチ 山本 悟)