Kiel Week 2017
130年の歴史を刻むキールウィーク2017/Jun/26

パラリンピック種目の2.4mR  Fotografie C.B. / © www.segel-bilder.de

パラリンピック種目の2.4mR  Fotografie C.B. / © www.segel-bilder.de

130年の歴史を持つキールウィーク2017が6月17日から25日の9日間にわたり、熱戦を繰りひろげました。


ドイツの北、バルト海沿岸にあるKiel(キール)は潜水艦基地のある軍港。バルト海から北海へと抜ける運河の始まる場所で、1972年ミュンヘン五輪でセーリング競技が開催された街です。市街地の中心にあるキールヨットクラブからオリンピックマリーナのシルクシーまで、街中で開催されるお祭りイベントが毎年恒例の行事になり、キールウィークという世界に唯一のセーリングイベントを築きあげました。

レースは6月17日から20日までのPart I(15種目、オリンピッククラス以外のドイツ国内のクラスやユースクラスが中心)、21日から25日のPart II(オリンピッククラス他)で構成され、2つにまたがる形でORCクラスのレースがあります。合計30種目を超える大イベントです。

これまで日本からも多くのセーラーがキールウィークに参戦しており、470女子では重・木下組、近藤・鎌田組がウイナーになりました。昨年は470ジュニアワールドがキールウィークで開催され、岡田・木村組が優勝、3位の高山・高柳組とともに表彰台に上がりました。

今年のキールウィークは、パラワールドセーリング種目の2.4R級とハンザ303級男女の3種目も開催され、日本から2.4Rに丹羽選手、ハンザ303男子に山本選手が出場しました。残念ながら東京2020パラリンピックからセーリング競技は落ちてしまいましたが、ワールドセーリングは復活をかけて今大会を開催し、参加国数は39カ国を数え、2024年からの復活へ向けて力強いスタートをきりました。採用種目の整備、参加選手の障害のカテゴリー等の課題は残っていますが、キールウィークの華やかな雰囲気に後押しされて、復活をとげる勢いができました。

パラリンピック種目のオープニングFotografie C.B. / © www.segel-bilder.de

パラリンピック種目のオープニングFotografie C.B. / © www.segel-bilder.de



21位となった2.4Rの丹羽巧選手

21位となった2.4Rの丹羽巧選手



 

Hansa 303 男子クラスFotografie C.B. / © www.segel-bilder.de

Hansa 303 男子クラスFotografie C.B. / © www.segel-bilder.de



Part Iにはラジアルオープンに鈴木義弘選手と冨部柚三子選手が参加しました。ユースセーラーの多くが登竜門として参加する国際大会ですが、鈴木選手は初日に堂々の総合1位でイエロービブを着用。最終日も表彰台をめざしてがんばりましたが、僅かに届かず4位でした。

ラジアルオープン4位の鈴木義弘選手

ラジアルオープン4位の鈴木義弘選手



21日からはオリンピッククラスが始まりました。
7月中旬から欧州選手権(キール)が開催される49erFX級、ナクラ17級、また470級男子に加えて冨部選手がオリンピッククラスのラジアル女子に参加しました。FX級には豊田自動織機の波多江・板倉組と原田・永松組の2チームが参加し、両チームとも上位25艇のメダルレースに進出。原田・永松組はこの大会が海外レースデビュー戦で、初挑戦ながらも23位(48艇エントリー)で決勝グループに残れたのはまずまずといえるでしょう。2チームともに15ノットを超えた風での課題が残りました。

Nacra 17は東京五輪からフルフォイル艇に変更になります。ただ、本レースではまだフォイリングしない従来のタイプでのレースでした。この種目で練習している飯束・畑山組にとっては初レースでした。1艇で走ることしかできなかった江の島での毎日から思えば、集団の中でレースができることがまずは第一歩の前進。フルフォイル艇が手に入るのはキールウィーク終了後ですが、これからが楽しみです。

470男子はオーストラリアのベルチャ―組が優勝、高山・今村組がメダルレースで逆転して3位で表彰台に上がりました。土居・木村組が7位、神木・疋田組が9位と3艇がメダルレースに出ました。

オリンピッククラスと同時開催の420級には130艇を超えるエントリーがありました。

470男子で優勝した Mathew Belcher /Will Ryan  Fotografie C.B. / © www.segel-bilder.de

470男子で優勝した Mathew Belcher /Will Ryan  Fotografie C.B. / © www.segel-bilder.de



メダルレースで逆転し、3位になった高山・今村組 写真提供/YAMAHA Sailing Team ‘Revs’

メダルレースで逆転し、3位になった高山・今村組 写真提供/YAMAHA Sailing Team ‘Revs’



開催地のキール・シルクシーにはセーリングそのものの楽しさ、セーリングが発展するであろう将来への希望、散歩しながらセールボートを眺められる街、セーリングをスポーツとしてメディアに発信する力、長年このイベントを支えてきた4つのセーリングクラブとボランティアの皆さんの思い、そしてドイツの底力を感じます。
EURシリーズに入るキールウィークは、パルマでのプリンセスソフィア杯と同様に欧州のセーリングを支える大会です。ワールドカップがエリートの大会になってしまった今、上位を目指す選手はキールウィークがスタートとなるのではないでしょうか。ぜひ、トライしてみてください。(レポート/斉藤愛子)

大会サイト:
http://www.kieler-woche.de/english/sailing/index.php

成績:
http://www.manage2sail.com/en-US/event/KielWeek#!/results?classId=34f45aaf-41a6-4cb7-9188-825d2e62427c