ジュニアユースセーリング・シーマンシップアカデミー
沖縄リポート――「答を教えないでください」2016/Sep/15

沖縄水産高校、知念高校のヨット部員と沖縄海洋少年団の小中学生たち

沖縄水産高校、知念高校のヨット部員と沖縄海洋少年団の小中学生たち

残暑厳しい9月3~4日、沖縄の宜野湾マリーナにおいて、ジュニアユースセーリング・シーマンシップアカデミーが開催されました。

講師はトヨタ自動車東日本所属の轟賢二郎氏と後藤浩紀の2人で、受講生は沖縄水産高校と知念高校のヨット部員と沖縄海洋少年団の小中学生たちです。

折しも台風12号が九州南部で猛威をふるっていましたが、幸いにも期間中は沖縄地方を避けるように北上し、台風一過の青空と適度な軽風の中、シングルハンド(レーザー、シーホッパー)とダブルハンド(420、FJ)を乗り回しながら2日間たっぷりとセーリングすることができました。

率直な感想を述べると、春からセーリングを始めたばかりの下級生たちはもちろん、目前に控えた岩手国体に出場する上級生たちでさえも、セーリング技術には少なからず課題がありました。離島ゆえの他水域との交流の少なさが一番の原因でしょう。何をすれば上手くなるのか? どうすれば速く走れるのか? 手探りで日々を過ごしているように推察されます。

セーリングはこれから普及していくスポーツです。情報化の進んだ現在でも教本や解説書の類いは少なく、沖縄の生徒たちは情報に飢えていました。この2日間、ここぞとばかりに日頃抱いている質問をぶつけられました。選手たちばかりか指導者の方々からも多くの質問を投げかけられ、はるばる沖縄まで来た甲斐がありました。

これまで北海道から沖縄に至る数々の水辺で、アカデミーコーチとして現地のジュニアユースセイラーを指導してきました。いずれの地にも必ず熱心な指導者の方々が存在し、日本のセーリング文化の将来を支えておられます。その地道な努力とセーリング愛には敬服するばかりです。

皆さん共通して謙虚な方が多く、アカデミーを日頃のご自分の指導を振り返る機会としていただいているように感じます。その意義は我々アカデミーコーチによる選手たちへの直接的な指導と互角か、むしろそれ以上に大きいと思います。

私は指導者の方々にこうお願いします――「答を教えないでください」と。
たとえばクローズホールドで上りすぎて止まっている選手がいるとして、「ティラーを引け!」という指導では、答をそのまま教えてしまっています。その時はよくても選手自身から考える機会を奪っているので、再現性が低くなります。せめて「ティラー!」だけにとどめれば、押すか引くかの判断は自分ですることになります。短期的にみると遠回りな指導法と思われがちですが、長期的には自分で考える習慣を持たせる方が、到達点は断然高くなります。人間は自分で努力して気づいたことは決して忘れないので、その蓄積はやがて大きな力となります。

アカデミーで接する指導者の皆さんと、自分が選手やコーチとして得てきた知識や経験を共有できるシーマンシップアカデミーは素晴らしいプログラムです。ぜひ今後も多くの地で盛んに開催されることを願っています。(レポート・後藤浩紀/SAILFAST)

轟賢二郎コーチ

轟賢二郎コーチ



後藤浩紀コーチ

後藤浩紀コーチ



海上練習の1シーン。海が青い!

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