オリンピックの登竜門として注目される「470級ジュニア世界選手権大会」が、2017年8月26日〜9月2日、神奈川県藤沢市・江の島ヨットハーバーで開催された。
■15カ国・地域から男女合わせて63チームが出場
江の島が2020年東京五輪のセーリング競技会場に決まってから、五輪種目の国際大会が開催されるのはこの大会が初めてということもあり、15カ国・地域から63チーム(男子38チーム、女子25チーム)がエントリー。日本からは男子25チーム、女子9チームが参加した。
出場資格が与えられるのは24歳未満の選手たちだ。昨年、ドイツのキールで行われた大会では、男子の岡田奎樹/木村直矢組が優勝、高山大智/高柳彬組が3位の快挙を成し遂げている。ディフェンディングチャンピオンの岡田選手と木村選手は、今大会それぞれ別の選手と組んで出場した。岡田選手は大学の後輩である松尾虎太郎選手、木村選手は昨年3位の高山選手とエントリー。高柳選手は、同じ大学の平野匠選手と組むなど、コンビのシャッフルはあったものの今年も日本人勢の活躍が期待される顔ぶれとなった。
女子は層の厚いヨーロッパ勢相手に、前週に行われた全日本女子選手権で優勝した宇田川真乃/関友里恵組、昨年の全日本女子チャンピオンである田中美紗樹/工藤彩乃組、社会人1年目となる林優季/西代周組などが、どんなレースをするのか注目された。
■レガッタ後半は台風接近で強風コンディション
今大会は台風15号の影響で、6日間のレース日程のうち、前半は軽風、後半は強風という変化の激しいコンディションで行われた。男女ともレース序盤からリードしたのはイタリア、フランス、スペインといったヨーロッパ勢だったが、3日目に男子の高山/木村組、女子の宇田川/関組がトップフィニッシュし日本勢の存在感を発揮した。
しかし、強風となった後半は苦戦する日本選手が多くなり、男子はオープニングシリーズ(予選)2位の高山/木村組と予選6位の岡田/松尾組の2組だけがメダルレース(決勝)に進出。女子は日本人最高位の宇田川/関組が惜しくも11位で、メダルレース進出を逃す結果に終わった。日本のハーバーは規定値以上の風が吹くと出艇禁止になるところが多い。日本人選手が強風を苦手とする背景には、そんな日本のハーバー事情も関連しているようだ。
最終日のメダルレースは、ガストで18ノット程度の北寄りの風の中行われた。先に始まった男子は、予選1位のHippolyte MACHETTI/Sidoine DANTÈS組(フランス)がスタートから2位の高山/木村組をがっちり押さえる展開に。そのまま先行して3位でフィニッシュし、総合成績で首位を死守した。
メダルレーストップは予選3位のGuillaume PIROUELLE/Valentin SIPAN組(フランス)で、総合2位に浮上。470級発祥の地フランス勢が優勝、準優勝を獲得した。高山/木村組はメダルレース5位で総合3位となり、銅メダルを手にした。
女子は予選1位のSilvia MAS DEPARES/Paula BARCELO MARTIN組(スペイン)が、メダルレースの途中で9位まで落ちて総合優勝を逃しそうになる場面もあったが、最後は6位まで順位を上げてフィニッシュし、二連覇を達成。強風で力を発揮したNia JERWOOD/Monique DE VRIES組(オーストラリア)が準優勝、Ilaria PATERNOSTER/Bianca CARUSO組(イタリア)総合3位で表彰台に上った。
■3年後に迫った2020年の東京オリンピック
表彰式を終えた高山選手は、
「今日はとにかくトップを取って、逆転優勝だけを考えていました。スタートはうまくいったのですが、首位のMACHETTI/DANTÈSもうまくて、押さえられるような感じに。彼らを意識しすぎて、3位のPIROUELLE/SIPANに抜かれてしまったのが悔やまれます。東京五輪に向けてライバルがたくさんいるので、メダルレースのような時にも勝負強く戦えるようにならなければいけないと思いました」と少し悔しそうな表情で今大会を振り返った。
木村選手は、
「地元開催ということもあって、プレッシャーも少しはあったのかなと思います。でも昨年に続いてメダルが取れたことは、素直に嬉しいです。これからはプレッシャーがかかる場面も増えてくると思うので、自分のペースで戦えるようにしっかり準備していきたいです」と話した。
この大会が終わると、2人は五輪代表の座を賭けて争うライバルとなる。
総合6位の岡田選手は、
「上位とは点差が開いていたので、メダルレースへ進んだ時点で表彰台は厳しいと分かっていましたが、軽風から台風の強風まで様々なコンディションでレースができたことは良い経験になりました」とコメント。
普段はスナイプ級に乗る松尾選手は、
「強風のリーチングはまだまだ怖くて……。でもいろいろ吸収できた大会でした」と手応えを掴み笑顔を見せた。
2020年の東京オリンピックまであと3年。オリンピックに向けた戦いは、ジュニア世代も交えこれからさらに熱を帯びることになる。
大会サイト
http://2017juniorworlds.470.org/en/default/races/race