Race Committee
レース委員会

ナショナル・レースオフィサー制度の趣旨

2002年10月27日
JSAFレース委員会

 JSAFレースオフィサー制度は2000年度よりスタートしました。現在各水域で、エリア・ レースオフィサー(ARO)324名の認定を終えています。AROはクラブレース・レベルあるいは 水域選手権レベルのレース委員長、もしくは海上でのレース運営をつかさどるのにふさわしい 資質を持っている人をレースオフィサーとして認定するものです。参加選手の少ない全日本 選手権ならARO資格に求められる知識・経験でも十分に対応できると思いますが、参加が数十艇 以上の全日本選手権大会ともなれば、レース委員長たる資格に求められる資質もより高度な ものになると思います。
 このような考え方の下にナショナル・レースオフィサー(NRO)という資格制度が設けられ、 今年度はこのNROの資格認定試験を行う予定です。しかしNRO資格というものに関して、未だ ご理解をいただいていない面が見られますので、ここにNRO資格というものをもう一度、 再認識していただきたいと思います。
  以下に、これまでお寄せいただいたご質問をまとめてQ&A形式でご説明します。なお、 本年3月19日付けで出しました「レースオフィサー制度の趣旨」という文書も合わせてご覧 いただきますようお願いいたします。

Q1:AROのままでは全日本選手権のレース委員長となることはできないのですか?

A1:現在日本にはまだNRO資格を持つ人がいないので、ARO資格のままでも、それにふさわしい人なら全日本のレース委員長を務めることはできます。しかし本制度の趣旨は、そのような人にこそNRO資格を取得してほしいと思っているのです。
例えば、中国地方のある県で、あるクラスの全日本選手権を開催しようとし、地元の経験豊かな人をレース委員長として委嘱したとします。もし、そのレース委員長がARO資格しか持っていないとしたら、当該県及び近県の選手ならその人が全日本の運営を行っても信頼できることを知っているかもしれませんが、東北地方の選手はその人を知らないためにレース運営に不安を感じるかもしれません。しかしその人がNRO資格を持っていれば、全日本選手権を任せうる人だと認識できるのです。
今後、各地でレースが開催される頻度が高くなるにつれて、このような公認制度が役立ってきます。もしも当該県にNRO資格を持つ人がいなければ(またはNRO資格者の都合がつかない場合)、他県のNRO資格者にレース委員長を委嘱することも可能です。NRO資格はいろいろな条件の下で、全日本レベルにふさわしいレース運営のできる資質を有している人を認定しているからです。

Q2:NRO資格に年齢制限を設けているのは何故ですか?

A2:本制度ではARO、NROともに年齢の上下限を設けています。
下限の設定は、その人がセーリングとレース運営の経験を積み重ねるのに必要とするであろう年数を基にし、 さらにレースオフィサーとしてふさわしい人間的成長を成しているであろう年齢を考慮して設定しています。
上限の設定は、レースオフィサーに必要とされる体力を維持しうる年齢を考慮して設定しました。もちろん、 体力は人によって大きな差があります。制限年齢を越えていてもレース委員長のできる人もいるでしょう。 本制度の本旨はこのような人を排除しようとするものではありません。 レース委員会では、こうした人たちのために「レースアドバイザー」という資格を設けることにしています。 そして、「レースアドバイザー」の方には、むしろ後進の育成に力を注いでいただきたいと考えています。

Q3:レースアドバイザーではレース委員長になれないのですか?

A3:そんなことはありません。レース委員長は本来その大会の主催者が委嘱するものです。
その大会のレベルにふさわしいレース運営を実現することが本来の目的であり、JSAFが強制するものではないからです。
ただ、主催者がレース委員長を委嘱する際に、レースオフィサー資格を基準にして行うことにより、客観的な人選が可能になると思われます。

Q4:NROとして都道府県連盟・外洋支部等からの推薦を受けているのに、さらに試験が必要なのでしょうか?

A4:レース委員長にふさわしい資質を筆記試験で判断することの不合理性はレース委員会でも熟知しています。 しかし、NROもAROも制度化された資格である以上、多くの人が納得する基準がなければなりません。
NROに求められるのは、全日本レベルの大会を運営できる資質です。 それは海上でのレース運営に限らず、陸上での運営も含めてトータルで大会をオーガナイズする能力です。
レース運営に必要なルール上の知識は言うに及ばず、いろいろなケースに対応できる経験、運営スタッフをまとめるリーダーシップ、 そして非常時における臨機応変の判断力など、多方面に渡っています。
レース委員会が行う試験は、NROが持つべき知識の部分を試すものです。つまり、この試験に合格することはNROの必要条件であるが、十分条件ではないと考えています。
このようにNROが持つべき知識を筆記試験で判断し、経験、リーダーシップ、判断力等については各都道府県連盟・外洋支部等からの推薦で判断したいと考えております。

Q5:ARO試験でも相当難しい内容でしたが、NRO試験はもっと難しいのですか? これではふるいにかけているとしか思えません。

A5:NRO資格は全日本選手権レベルの大会をコーディネイトできる能力を要求される資格です。
その意味では、ある程度高度の知識が要求されるのは当然でしょう。また、NRO制度そのものは、ISAFが推進しているインターナショナル・レースオフィサー(IRO)制度のナショナル・ヴァージョンとして考えられたもので、NROの次のステップはIROと位置付けています。
そこで、NROはIROへのステップであると意識していることも事実です。現在のIRO試験はすべて英語で行われますが、 内容的にはかなり高度なものになっています(といっても、レース・マネージメント・マニュアルを熟読していればクリアできる内容だそうです)。
そこで、NROのレベルは(言葉の問題を除いて)できるだけIROのレベルに近づけたものとなるように考えています。これからのレガッタは、全日本クラスでも国際的に開かれたものになることが求められてくるでしょう。そこで国際標準に従ったレース運営が求められるのです。もちろん冒頭に述べたように、レース・オフィサー制度は「ふるいにかける制度」ではなく、各レベルのレース・オフィサーが求められている水準に達してくれるよう「願っている制度」であることを認識してください。

Q6:NROは具体的にどのようなことをするのですか?

A6:NROの仕事内容は全日本レベルの大会を、「運営する」ということと、さらに「コーディネイトする」ことです。実際の大会へのかかわり方は3月19日付の文書で紹介しておりますのでそちらをご覧ください。
もうひとつJSAFレース委員会がNROに求めている仕事があります。それはAROの育成です。具体的にはARO育成のための講習会で講師を勤め、 AROの指導育成に努めていただくことになります。さらに、ARO認定のための基準を固めていくこともNROの仕事となるでしょう。 ルールも4年ごとに変わりますし、レガッタ運営のノウハウも日進月歩、いろいろな変化があるはずです。こうした変化に対応したAROのあり方を提言していただくのもNROの役目のひとつだと思ってください。