□JSAF外洋レース規則

前  文
 レースは、シーマンシップに基づき、フェアプレーの精神をもって行わなければならない。
 外洋レースは、広い海面で行われ、レース艇間相互の確認ができない場合も多い。従って、規則を守り、フェアプレーの精神を生かすのは、艇長および乗組員自身である。


第01条 責任の所在
 1.艇と乗組員の安全の確保はオーナーの避けられない責任であり、オーナーは、所有艇が十分に艤装され、かつ、必要な耐航性を保ち、荒天の海にも適した経験豊かなクルーを乗り込ませるようにしなければならない。
オーナーは、船体、スパー、リギン、セールおよび全ての備品を確実に整備し、また安全備品が適正に維持格納され、それ等の使用法と置場所を乗組員に熟知させておかなければならない。

 2.本規則、ORC特別規定およびその他のJSAFが定める外洋レースに関わる特別規定の制定、適用およびこれ等の諸規定に基づく検査の実施によって、オーナーの全面的な責任は免れ得るものではない。

 3.乗組員は、自己の責任に於て自身の安全を確保し、落水等のないよう努め、かつ、艇と乗組員の安全の確保に努めなければならない。
乗組員は、荒天の海にも耐え得る精神力と体力を養い、かつ、操艇または作業ができるよう技術を磨き、また全ての装備および安全備品の使用法と置場所を熟知するよう努めなければならない。

 4.何れの艇に乗るか、またレースに参加するか否かは全て各乗組員の責任のみで決定される。

 5.レース艇がスタートするか否か、またレースを続行するか否かは、全て各艇の責任のみで決定される。

 6.参加艇や乗組員の事故(死亡、傷害、沈没、破損等)および第三者に与えた損害についてはJSAFならびに主催団体は如何なる責任も負わない。


第02条 外洋レースに適用される規則
 1.本規則、国際セーリング競技規則(以下RRSという)、ORCが定める規則(定)およびその他のJSAFが定める外洋レースに関わる特別規定

 2.海上における衝突予防のための国際規則ならびに国内法(日没から日出まで適用)


第03条 参加資格
 1.レースに参加する艇は次の各号を満たすものでなければならない。
(1) JSAFの登録艇またはJSAFの会員がチャーターしている艇であること。但し、外国艇の参加はその国の所属クラブの証明があれば可とする。
(2)JSAFが定める規則による有効なレーテイング証書または計測証書を有する艇であること。
(3)ORC特別規定およびJSAFが定める外洋レースに関わる特別規定に基づく有効な検査証明書を有する艇であること。

 2.レースに参加する艇の乗組員は次の各号を満たすものでなければならない。
(1)艇長はJSAF外洋(関係)加盟団体の会員であること。
(2)全日本選手権大会においては全乗組員がJSAFの会員であること。
(3)全日本選手権大会に準ずるレース、各JSAF外洋(関係)加盟団体選手権大会、各水域の選手権大会及び同大会に準ずるレースの乗組員参加資格は、帆走指示書によって明記されなければならない。
(4)上記(1)〜(3)の外国人の参加資格は、その国の所属クラブの証明があれば会員と看做す。


第04条 レース委員長
 1.レース委員長はJSAF外洋(関係)加盟団体の会員でなければならない。

 2.レース委員長は大会の運営上最も重要な目的である全競技者の安全の確保と競技の公平性の確保の為に、自己の運営するレースに参加してはならない。


第05条 プロテスト委員会
プロテスト委員会は次の各項により構成されなければならない。
 1.全日本選手権大会および同大会に準ずるレースのプロテスト委員長は、A級ナショナル・ジャッジとすること。又、プロテスト委員会の構成は全員ナショナル・ジャッジの有資格者とし、原則として3名以上のA級ナショナル・ジャッジを置かなければならない。

 2.各JSAF外洋(関係)加盟団体選手権または各水域の選手権大会及び同大会に準ずるレースのプロテスト委員長は、ナショナル・ジャッジの有資格者とし、プロテスト委員会の構成員の過半数は、ナショナル・ジャッジの有資格者とすること。


第06条 レース旗
 1.レース参加艇は主催団体の定めるレース旗をスタート10分前からフィニッシュまたは棄権するまでバックステイに掲揚していなければならない。
但し、その高さはレース旗の下端がデッキの上から1.5m以上とする。

 2.レースを棄権する場合にはレース旗を直ちに降下しなければならない。


第07条 エンジンの使用
 1.落水者救助、遭難艇(船舶)救助、衝突回避、その他の緊急事態に対処するためにエンジンを使用することができる。但し、エンジンを使用した場合には、その状況(使用した目的・時間・場所等)について、フィニッシュ後レース委員会に速やかに報告しなければならない。

 2.投揚錨、排水および充電のためにエンジンを使用することができる。但し、この場合にはプロペラが回転しないようにしなければならない。

 3.ロングディスタンス・レースまたはオフショア・レースにおいては、スタート信号後15分経過しても、スターティング・ライン付近に到達することができなかった場合には、同ラインまで機走し、または曳航されることができる。
但し、機走し、または曳航された場合には:
(1) 帆走に移ってから360度回転した後、スタートしなければならない。360度回転を完了するまでは他のレース艇を妨害してはならない。
(2) その状況(使用した時間・距離等)についてフィニッシュ後レース委員会に速やかに報告しなければならない。


第08条 無線通信の禁止
無線送受信機(無線電話も含む)は、遭難・緊急・安全の各通信ならびに帆走指示書に定める通信を除き、使用してはならない。


第09条 出艇申告書・乗組員リストの提出
艇長は、特に定める場合を除き、所定の出艇申告書ならびに乗組員リストに必要事項を記入し、署名の上、レース委員会に艇長会議または所定の時間までに提出しなければならない。


第10条 棄権艇の通知義務
 1.出艇申告した艇がスタートしない場合には、その旨をレース委員会に速やかに通知しなければならない。

 2.レースを棄権した場合には、その旨をレース委員会に速やかに通知しなければならない。但し、電話により通知する場合には、これを必ず艇の責任者が行い、第三者による伝言は避けなければならない。


第11条 レース報告書・航跡図の提出
 ロングディスタンス・レースまたはオフショア・レースにおいては、艇長は、特に定める場合を除き、所定のレース報告書にレース中の事故の有無ならびに規則に違反したかも知れないケース、若しくは違反した事実ならびにエンジンの使用に関する事項等を記入し、かつ、所定の航跡図に必要事項を記入し、署名の上、フィニッシュ後レース委員会に速やかに提出しなければならない。


第12条 失格に代わる罰則
 次の規則違反については、プロテスト委員会の判断により、失格または2〜5%のタイム・ペナルティを課すことができる。
 1.ORCが定める規則(規定)およびJSAFが定める外洋レースに関わる特別規定

 2. ロングディスタンス・レースまたはオフショア・レースにおいてのRRS29.1および30.1に関わる規則違反。


第13条 規則の変更
 本規則は理事会の議決を得なければ変更できない。
 又、理事会が必要と認めた場合にはルール委員会の議決を必要とする。


付  則
 本規則は2000年4月1日より実施する。