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平成13年度全国普及安全会議の開催報告
指導者委員会 副委員長 進藤 正雄
毎年開催されている平成13年度全国普及安全会議を11月17日と18日の二日間にわたり横浜市内で 開催いたしましたので報告いたします。この会議は従前各都道府県の連盟理事長にお集まりいただいて開催 をしておりましたが、学校体育や社会体育が変革期を迎え始めた事を受け、それらを正しく理解して セーリングスポーツを更に普及拡大を進めるために、関係諸団体にも広くご参加をいただき、 私たちが取り組もうとしている活動に対しご理解やご協力をお願いするものとして近年は開催されています。 またタイトルの通り普及に欠かせない安全問題についても指導者の役割としての意識向上も狙っています。
今回は全国40の都道府県セーリング連盟から60名、関係者団体からのご参加は次のような状況でした。
福井県大飯町教育委員会(時岡 聰様)、柏崎ジュニアヨットクラブ(二宮壮行様) 長崎サンセットマリーナ(松尾哲郎様)、銚子マリーナ(菅原洋様、清水司様) B&G財団(高橋裕様、吉沢拓也様、朝日田智昭様)、マリーナ河芸(服部正樹様) 河芸町役場(伊藤恵一様)、岐阜マリンスポーツセンター(小原良次様) 新西宮ヨットハーバー(植田明徳様)、銚子ヨット協会(宮沢宏男様) 横浜港振興協会(三園徹様)、トヨタ自動車(荒居敦様) NEW!わかふじ国体御前崎町相良町実行委員会(森田八郎様、植田高志様、堀了裕様) 日本海洋レジャー安全・振興協会(川口忠様)、セーリング普及振興会(根岸武香様) 日本マリンスポーツ普及教育振興財団(福原敏行様、箱守康之様)、玄(山本聖二様) 尾道海技学院(大坂清様、村瀬保文様)、海洋ジャーナリスト(桑名幸一様、豊崎謙様)17日午後1時30分当連盟の小田専務理事の開会挨拶で会議が始まりました。最初に鹿屋 体育大学教授生涯スポーツ実践センター所長川西 様に「学校・地域スポーツの変革期生涯 スポーツとしてのヨットを探る」を演題にご後援をいただきました。
文部科学省が提言したスポーツ振興計画(子供から大人まで週に2回以上スポーツ活動に参加する) や厚生労働省の打出した健康日本に関する計画等を基本に置き、将来の日本のスポーツクラブの 在り方やその組織の概要、あるいは運営の方法等についての講演がなされた。とくに 日本のスポーツクラブとドイツのそれとの違いの紹介例の挙げ、日本のクラブは少数精鋭 (15〜20人が圧倒的に多数である)がドイツのスポーツクラブは少ない所でも100人、 多いクラブでは5000人が所属している。内容も1種目ではなく、多数の種目がクラブの中に 共存している。また参加年齢層も子供から高齢者までであり、真の意味でのクラブである。 またシーズンによって参加者が複数の種目を行うとの事であった。スポーツクラブの運営について、 日本ではどうしてもボランティアの型を取るが、これではクラブとし長続きさせるのが困難であること。 そのためにはNPO形式を取り、専任のマナージャー・コーチを充実させることが必要であるとのことでした。次は笹川スポーツ財団常務理事藤本和延様に「スポーツを楽しむ組織について」を演題にご講演をいただきました。 藤本さんは毎回この会議でお話をしていただいておりますが、クルーザーを楽しまれるヨットマンでもあります。
ヨット人口が減少している理由はどこにあるのか。日本のヨットは大学生のヨット部に頼っている。 この傾向はラグビーについても同様である。いまのままではヨットについても衰退の方向へ向う 傾向が伺われるとの事でした。
この理由は大学卒業後多くのヨットマンは再びヨットに乗りたいと思っていても経済的理由により 個人でヨットを購入することが困難である。またいわゆるヨットクラブがほとんど存在しないため 乗艇の機会にも恵まれず、ヨット人口が更に減少するとの事でした。
ヨット人口を増やすためには先ず、ヨットクラブを作る必要がある。例として海外のヨットクラブの 運営方法を紹介があった。海外ではヨットクラブと称してもヨットばかりではなく他のスポーツも 取り込んでいる場合が多数である。また中にはヨットを行う会員よりもヨットを行わない会員数が 多い場合もかなり見受けられる。これらのクラブは地域に対して社会貢献を行っている。例えば 高齢者の人がカードしに来る場所として使用したり、こども達がアフタースクールの活動拠点 としてヨットやサッカーを行う場として提供されている。この様なクラブにはクラブハウスが 必ずある事が出発点である。またハウスは必ずしもハーバーに隣接している必要はなく、都会の中に (シティー・クラブ・ハウス)建設されている場合もある。日本においてもクラブをNPO化し、 幾つかの条件をクリアーして申請を行えば法人格の許可が出るとの事であった。 なおクラブを設立する際にはそのクラブのフィロソフィーを持つ事(例えば「海を愛すること」、 「美しい生活を目指す」)が大切であり、フィロソフィーのないクラブは近い将来に 衰退することが通例であるとの事でした。また専任のマネージャーが必ず必要である。次は琵琶湖で長年にわたりヨット教室を経営され、最近ではこの教室に小学校、中学校、 高校などの利用が激増している実状などについて講演 「琵琶湖におけるヨット教室の学校利用」 についてBSCウォタースポーツセンターの井上良夫さんにお話をいただきました。
30年前からヨットを中心に企業として行われている。使用しているのはクルーザー・ディンギ・ ウインドサーフィン・水上バイク・バスフィッシングボート等々である。
このセンターは観光産業として成りたたせるため、学校などの他一般の人達向けに、 お月見ナイトパドリング(カヌー)、ナイトクルージング(クルーザー)やサンライズ・ カム・クルージング、桜並木カヤックで見に行こう、と称して募集を行うと多数の参加者があるとのこと。
また琵琶湖横断(3泊4日)を行っている。内容は初心者を対象にトレーニングし、 スタッフは参加者から見えないように付いていく(見えると甘えが出る)。
学校関係を対象として行って来たが1995年は参加者115人であったが、翌年は992人に増加した。 理由として某学校のより視察があり、学校で行えない事が出来ないかとのことであった。 費用等の問題も解決し可能となった。
その後、琵琶湖自然体験学習と称し多数の中学校が参加し2000年には9540人が参加した。 このプログラムと類似したものを公共施設を利用して行うと、より安価にできるのだが、 保護者からの話によると、公共施設を利用すると学生が第3者から管理されるので好ましくとのことで、 当センターを利用するようになったとの経緯がある。
さらに近年では近畿圏・中四国圏からの参加も増加しているとの事でした。
また大学の集中授業の一環としても利用されている。これらの参加者の感想をまとめたところ、 琵琶湖の大きさ、風の心地よさや、スポーツを行って何か自信が出来たとの意見が多く、 ヨット等を通してウオータースポーツの技術的な感想は5%程度であった。
要は参加者は技術そのものを欲しているのではなく、非日常的な感動等を求めている事が示されてようだ。
なお、産業として行って行くため、近隣のホテル・民宿・レストランからも喜ばれているし、 県や市町村からも応援をしてもらえる様になった。 ただし、企業として注意しなければならない事はスタッフ(会社員としての雇用) の問題を解決しなければならない。また事故に際しての保証問題(保険加入) を念頭にいれなければならない。次いで海水浴場で多くの人命を安全を守るために、日本のライフセービングを手がけられて 来られた日本ライフセービング協会理事長の小峯氏に「ライフセービング協会の活動」 のお話をいただきました。
ライフセービングの本場であるオーストラリアでは1907年から組織立てられて活動がされている。 日本では20年程前にこのシステムが導入され主として海水浴場での人命救助としての活動が開始された。 諸外国では小学校からライフセービングの教科が取り入れられており、老若男女皆ライフセーバーとの考えを持っている。
ライフセービングの原点は「自分の命は自分で守る」いわゆるセルフセービングであり、 余裕のある状況で人を救助しようとの考えから始まっている。
日本では北海道から沖縄まで広い範囲にライフセーバーが活動をしている。通常は各海水浴場と その地域社会および自治体との相互協力をしながら活動行っている。活動の内容は人命救助だけではなく、 浜の清掃、怪我をした人の援護、安全の公報活動等が挙げられる。またライフセーバーは 救助法についての講習、競技会の参加を通して、自己の技術の向上をはかっている。その夜は会議出席者のほか、今回の会場の手配などについて大変お世話になった地元神奈川県連の石井会長、 それに関東ヨット協会の佐藤東京都連会長などを交え懇親会が開催され、大いに盛り上がりました。 (会場 ホリデーイン横浜 2階)
翌11月18日(日)にはパシフィコ横浜会議センターで会議が行われました。
まず「指導者の育成などについて」 指導者委員会からの報告、連絡を行いました。
その後「公認スポーツ指導者の活用と今後」という演題で 田中紀祐氏(日本体育協会スポーツ指導者育成部長) からスポーツを取り巻く国の施策の方向についてお話いただきました。
文部科学省が打出したスポーツ振興計画に基づき日本体育協会は21世紀スポーツ基本計画を唱えている。
1、生涯スポーツ:生涯スポーツとしては国民が週1回スポーツ実施率を30から50%に向上させる。 このためには、総合型地域スポーツクラブを設立する。これは多種目・多展開を目的とし、 全国3000ヶ所を目標に作る。この資金はいわゆるサッカーくじを当てる。また広域スポーツセンターを設立する。 主として国体で使用した施設を利用して行う。
2、国際競技関係:競技者の育成プログラムを作成し実施する。特に一貫性に重点をおき、 競技者の発育段階や競技力の向上に合わせたプログラムを作成し、複数の指導者が1人の競技者を育てていく。
3、学校体育スポーツにおける前出1と2との連携を行う。
指導者資格の講習について、現在の講習内容を見直しより現場に直接有益なプログロムを盛り込む様に、 また講習時間をより適正な時間数に改めるための論議を行っている。
日本のクラブも1種目だけを対象に設立するのではなく、例えばヨットを主としていろいろな行事を行う事の 出来るクラブ形式とする方が望ましい。なおクラブハウス等のハード面は行政が作り、運営は民間団体に委託し、 自分たちのクラブは自分たちで運営をする形式にする事が望ましいとのお話でありました。次いで「障害者が楽しむヨットの普及現状について」と題し、西井伸嘉氏(Sailability Japan) からアクセスディンギーの紹介と活動状況についてお話いただきました。
まずはアクセスディンギーの特徴を実物を目の前にし説明いただきました。
・艇の材質がやわらかく、衝撃に対してすぐに亀裂を生じるようなことがない。
・センターボードが重く、重心も低いことから安定性が強い。(沈しない)
・前向きに座って舵の操作が出来る。(舵の操作やセールのトリムが電動で出来る)
・カラフルで練習状況を把握しやすい。
などなど。
このようなことから、身体障害者(下半身不随)などの人にもセーリングを楽しんでいただける艇として、 また精神障害や知能障害者にも自然を楽しんでいただける道具として活用できるものであるといった事例を発表いただき、 商売というより艇の紹介を通じて障害者に夢や感動を与えるボランティア活動をされているといったほうが適切では ないかと思われるほど、熱っぽくお話いただきました。
また西井さんはいつも奥様とご一緒で、セーリングの普及がお二人の楽しみでもあるようで、 今後ともその活動が期待されるところでした。続いて競技スポーツで確実な実績を上げながら、地域に根を下ろした普及活動を着実に展開されている 佐賀県セーリング連盟の活動を重由美子さんにご紹介いただきました。ご存知の通り重さんはアトランタオリンピックの 銀メダリストでもあります。
佐賀県唐津市にある玄界ヨットクラブでは主として小中学生を、またその父兄の方、さらに主婦や退職された方などが ヨットスクールに参加されている。現有している艇種はOP・シングルハンド艇・大型ヨット(定員10名)とカヌーである。
スクールのカリキュラムはニュージーランドのウオーターワイズのカリキュラムを基に地元の形態に変更して用いているとの事でした。
スクールでは先ず陸上でのタッキング動作・沈の起こし方等のシュミレーションを学習し、そのグループの 全員が行えるようになってから海に出るそうです。スクールを行っている海面には幾つもの島が点在し、 それぞれの海域では同時刻においても多種多様な風と波が有るそうです。そのため初心者から上級者そして レースを行う場合でも海域を変える事により多様な利用方法があるのでスクールには非常に適した地域との事でした。
このスクールは参加する人達の口コミで増加した経緯があり、スクール自体からの参加の要請は皆無に近いそうです。
学校の学習の場としても大いに活用されている(こちらが主)との事でした。最初は先生の新任研修の一貫として始まったそうですが、 研修を受けた先生方が海のすばらしさ、スクールの充実性に感激し子供達にもヨットに乗せたいとの願いから始まったとの事でした。 このスクールを行うに際して軽微な怪我や事故を想定し、学校単位での参加には学校として保険に加入し個人的な参加者については 保険会社に相談しヨットに見合った保険に加入しているとの事でした。指導者についても加入しているそうです。 今後の課題としては、海の安全性について学校関係者・保護者の方に訴え続けることが大変必要との事でした。また悪天候に 際しての陸上での代替カリキュラム等の作成をさらに充実したものにする努力が必要とのことでした。その後は各委員会からの報告、連絡( 「県連アンケートについて」水域活性化委員会、「ナショナル・レースオフィサーについて」 レース委員会、「女性委員会の活動について」 女性委員会、)を行い、会議を終了いたしました。
2日間にわたる会議にもかかわらず、ほとんどの人が最後まで熱心に各講師のお話に耳を傾けておいでで、 会議主催者としても満足のいくものでした。
平成14年度は千葉で11月16日、17日に開催をする方向で検討を始めています。
会議の内容をさらに充実したものにするため、セーリングの普及の現場で活動している人たちの意見も取り入れて行きたい と思っております。
どうぞご意見を。お待ちしております。
指導者委員会 委員長 斉藤 威 ta-saito@k8.dion.ne.jp 〃 副委員長 松田 任弘 matsuda@land.hokuriku.ne.jp 〃 副委員長 進藤 正雄 shindo@taiiku.tsukuba.ac.jp