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2009年ユースワールド

高橋 航氏のレポートです

関連サイト:
公式サイト
http://www.isafyouthworlds.com/home.php

Index 2009年ユースワールドのお知らせ

Volvo Youth Sailing ISAF World Championship 2009が、ブラジルのブジオスで開催されています。
日本チームは7月9日に現地入りしました。アトランタ経由で30時間近い移動を行いました。トランジットは比較的順調に進み、長い待ち時間を過ごせれば問題なく移動が出来ました。

ブジオスは、リオデジャネイロから北に180キロのところにあるリゾート地です。気候は過ごしやすく、日本の夏の終わりから秋の入りといったところです。海岸沿いにホテルが並び、その奥にヨットクラブがあります。滞在しているホテルとヨットクラブは歩いて5分ほどの距離で、移動は比較的簡単です。

 日本チームは9日に到着し、受付とチャーターボートをもらいました。10日の午前中はチャーターボートの準備とチューニングを行い、午後はプラクティスレースに参加しました。チャーターボートは新艇で非常に作りがよく問題なくセッティング、チューニングを行えました。プラクティスレースのコンディションは風速8m/s前後ですが、波が比較的高い感じです。吹きすぎているという状況ではないので、感触良く走れたようです。
 
 夕方からは、開会式が行われました。明日からいよいよレース初日です。どんな闘いができるか楽しみです。最後まで最大限の努力をして、闘っていきたいと思います。

参加メンバー
・420級 男子
   稲葉 幸平 /  峯 卓人 組 (玄海セーリングクラブ)

・420級 女子
   山口 優 / 牟田 絢美   (玄海セーリングクラブ)

・レーザーラジアル女子
   多田 桃子 (玄海セーリングクラブ)

・帯同コーチ
多田 義文

高橋 航
Photo:高橋 航
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大会のホストのブジオスヨットクラブ
Photo:高橋 航
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ヨットクラブがすべて会場となり、1つのスロープから全艇が出艇します
Photo:高橋 航
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開会式前のパレードで


Index 2009年ユースワールド 第1日目

 レース初日です。朝起きると音を立てて風が吹いています。ホテルから海面がよく見えるのでコンディションを把握するにはとても良いです。海から入る北東の風がしっかり入っていて、波も十分な高さがありそうです。

 12時スタートなので余裕を持って、朝の時間を使えます。また、ホテルとハーバーが近いため、行き来が容易です。そのため、しっかりと艇の準備ができています。
 この大会は、各国のコーチ陣が1つの大きな観覧船に乗り込みレース海面に向かいます。レース海面は、シングルハンド、ボード、ダブルハンドの3海面に分かれています。レース海面までは、シングルハンドがもっとも遠くダウンウィンドで20分近くはかかるでしょうか。
 海面のコンディションは、波がポイントとなりそうです。大西洋から来る周期の長い、うねりが入っています。マスト半分くらいの高さはあると思います。極端に高い訳ではないので、その周期に合わせることが重要になってきます。風速は15ノットあたりを最高にしてそれ以上にはあがらない状況です。今日は、レース途中に180°風がシフトしてしまいレースをキャンセルをしました。その前後は、9ノット前後まで風がおちてしまいました。

 ラジアル女子は、十分手応えのあるスタートを切りました。スピードでは負けておらず、コースとダウンウィンドで勝負できている感じです。しかし、一瞬のスキが順位に響くので、集中したレースプランニングが必要となります。420男子は、きれいに決まったスタートがブラックフラッグにかかり(成績はDNFで表示)出だしをつまずいてしまいました。しかし、挽回できる余地はたくさんあり、ここから調子を上げていきたいです。420女子は、波と風に負けている感じで、同じく走り出しにつまずいてしまいました。DNFとなった第2レースは、中盤のフィニッシュから完全に風が無くなってしまい多数がフィニッシュできませんでした。また、こちらは日没が5時半くらいで、今日の最終レースのフィニッシュは時間がかかってしまったため、日没後の着艇となりました。

 いよいよシリーズがスタートしました。感触的には良い雰囲気なので、今後この調子を右肩上がりにしていきたいと思います。天候も変化があるようで、日本チームに味方してくれる風が吹くことを期待しています。

  1. ラジアル女子

多田 桃子   (18位、5位)  11位/39艇中

  1. 420男子

稲葉・峰 組  (26位、DNF)  31位/31艇中

  1. 420女子

山口・牟田 組  (23位、DNF) 23位/23艇中

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会場にはスロープが1つしかなく出艇は大混雑です
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レース前の走り合わせをする日本チーム
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南米大陸を左手に見てレースを展開しています


Index 2009年ユースワールド 第2日目

 本日は、陸上待機から始まりました。低気圧の通過に伴い、30ノットを超える風が朝から吹いている状態です。レース委員会は、午前中に2時間の待機を決定したので、一旦ホテルに戻りました。しかし、2時間後も風はあがる一方で、レースの延期を決定しました。2日目は、レース無しです。
 昨日は風が180°振り無くなる、本日は朝からの強風で待機と、なかなかいいレースをさせてもらえません。明日からは風が弱くなる方向です。まだまだ、どうなるか分かりません。仕切り直しで、レースの組み立てをもう一度考えていきたいです。

 月末に行われる4.7ワールドの遠征チームに参考になればと思います。こちらは季節的には冬なのですが、気温は25℃前後といったところです。夜には、かなり肌寒くなります。海上には、薄目のウェットスーツもしくは厚手のインナーにパドリングジャケットくらいでセーリングできます。選手に聞くと寒くは無いようですが、気温が下がった場合や曇りであったりすると寒くなると思います。陸上では夏の格好でいられますが、夜や朝のために長袖かアウターがあると便利です。

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ホテルから見るレース海面、良く吹いています
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フラッグをあげるはずが風で飛んでしまいました、ホテルに戻ります


Index 2009年ユースワールド 第3日目

 昨日まで吹き荒れていた風はぴったりおさまりました。朝方は気温がおちていて肌寒いです。見るからに風が無さそうな1日の始まりでした。
 コーチミーティングでは、スケジュールの変更は行わないことが伝えられ、またレイデイはこの大会において重要な位置を占めるため、レイデイも予定通り行うと説明がありました。

 気温が上がるにつれて風もおちていき、出艇する頃にはかろうじて風がある程度になってしまいました。やはり、スタート時刻には風が無くなり、海上での風待ちとなってしまいました。待つこと2時間、東からの陸風でようやくレースが始まりました。8ノット前後という日本チームの好きな風でのレースです。
 
 しかしながらレーザーラジアルは苦戦を強いられました。スタートは上手く行くものの、その後のスピードと展開で思うように走らせてもらえません。下位グループに落ちてしまい大きく順位を落とすことになってしまいました。昨年も好調であったシンガポールの選手がまとまりのあるレーススコアで首位に立ちました。
 ダブルハンドは、女子チームが1本目リコール。シンガポールと日本の2艇だけ読まれてしまい、またもや英語のスコアをとってしまいました。惜しいスタートです。このスタートを決めること、そしてその後の展開を思うようにできることが紙一重のところでできません。細かいところなのですが、押しの強さともう少しの図々しさがないとはじかれてしまうようです。スピードでは負けていないので、積極的なレース展開をしていきたいです。男子は、1本目に5位をとることができました。スタート後の右展開が功を奏し、上位に食い込めました。2本目はスタートは良かったのですが、ダウウィンドでのシフトとコースが掴めず上マークの順位をキープできなかったため、中盤の順位になってしまいました。しかし、前日よりは確実に順位を上げることができました。レースに対する自信はあります。この自信を上手く生かして、レースプランニングができればシングルを並べることも難しくありません。後半戦にさらに挽回です。

 今日は弱い風でのレースでした。他国の選手を見ると、この風には慣れていない感じが見てとれました。しかし、展開とダウンウィンドは的確で、外すことは無いようです。レイデイ明けの後半戦も、このような風でやらせてもらえそうな予報です。今日得た反省点をもとに、ここからのレースにつなげていきたいです。

  • ラジアル女子

  • 多田 桃子   (18位、5位、35位、34位)  25位/38艇中
  • 420男子

  • 稲葉・峰 組  (26位、DNF、5位、17位)  22位/31艇中
  • 420女子

  • 山口・牟田 組  (23位、DNF、OCS、19位) 24位/24艇中
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出艇はスタッフが手伝ってくれます、ブラジルの元気な兄ちゃんたちです
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スタート風景、いいスタートができています
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まだまだ元気にレースができています、ライトウィンドで順位を上げたい!


Index 2009年ユースワールド 第4日目

 本日はレイデーです。
レース委員会はカーニバルのコンテストを企画開催してくれました。多くの選手は参加していたようです。日本チームは、自由参加としたのでそれぞれ思い思いの1日を過ごしました。

 明日からは、スケジュールを変更して1日3レースを行うことが発表されました。本日も海上は15ノット前後の風が吹いている様子でした。毎日違ったコンディションであるため、バリエーションに富んだレースができます。

 今日1日のリフレッシュを後半戦に生かしていきます。残り7レースを大事に使い、少しでも順位を上げていきたいと考えています。

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大会本部のあるホテルでカーニバルの練習です
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宿泊先のホテルです(前述のホテルとは別の場所になります)


Index 2009年ユースワールド 第5日目

 大会6日目、これまでの天候とはうって変わって霧雨が降る朝でした。風は多少あるものの長続きしない感じでした。

 12時スタートの3レース予定なのでいつも通りハーバーに向かいました。さらに雨は強くなり、レイデー明けの後半戦は雨の風無しで再開かと思われました。

 予想通り、スタートの延期が伝えられ、風待ちとなりました。雲は動かず、陸上待機で3時間。しびれを切らしたレース委員会は、とりあえず出艇合図を出しましたが、レース海面に着く頃にはまた風が無くなり海上待機となりました。その後、2時間半待ちましたが、風は吹くことなくそのまま陸に戻ってきました。

 まだ4レースしか消化できていません。シリーズ中に2回のノーレースの日が出来てしまいました。残すところ2日、4レースです。良いレースを出来ることを祈りたいと思っています。

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傘をさしていたらカメラマンが寄ってきました
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宿今回はたびたびの曳航シーンがあります


Index 2009年ユースワールド 第6日目

 レイデー、翌日は風無しと2日間レース無しの日が続いたが、やっとブジオスらしい風が吹きそうな日が来ました。選手、コーチ、レース委員会すべてが気合いを入れて会場に集合しました。前日にレーススタート時間を30分早めたので、全体的にスピーディーに準備が進みました。

 海上でもコーチボートに集まってくる選手には、それぞれのコーチからいつもより強めのアドバイスが飛んでいました。今日は海風であるため、安定して風が入っている様子です。風速は、16ノット前後で後半になるにつれてあがってきました。

 ラジアル女子多田選手は、ボートスピードもあり、展開も引けをとらず中盤での戦いをしています。風がある方が自分の走りができ、もう少しでシングルに手が届きそうな場面もありました。ダウンウィンドの調子が良く、相手を抜いていけるチャンスが多々あります。本日の最後は、上有利のスタートでリコールをとられてしまい、惜しいレースを逃してしまいました。風がある中で十分戦えていることは、最近の日本選手には無いことなのでこの感覚をさらに磨いていって欲しいと思います。

 ダブルハンドの420男子稲葉・峰組は、スタートとスタート後のスピードで遅れをとってしまい、なかなか中盤より上に行けません。風が上がると他の選手が息を吹き返したかのように、走り出します。ボートスピードに差があるようで、苦戦を強いられました。女子山口・牟田組については、スタートで外にはじかれてしまい上マークの順位を上げることができません。女子も同様で風が上がるとセーリングテクニックに歴然とした差が出てしまいます。

 本日は3レースをしっかり行うことができました。全体的な成績では、シンガポールが上位に上がってきました。シングル、ダブルハンドとも5位以内に位置し存在感をアピールしています。
 残すところあと1日となりました。最終レース、少しでも順位を上げられるようにしたいものです。日本チームのメンバーは、この後も世界選手権(イタリア・ガルダ:7月27日〜8月5日)を控えています。今回の大会で多くのことを学び取って帰ることを願っています。

・ラジアル女子
 多田 桃子   (18、5、35、34、17、12、(OCS)) 22位/38艇中

・420男子  稲葉・峰 組  (26、DNF、5、16、21、26、(DNF)) 23位/31艇中

・420女子  山口・牟田 組 (23、(DNF)、OCS、19、21、19、18) 23位/24艇中
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良いレースをしています、多田選手!
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ダウンウィンドで戦えています
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2上になるとミートする艇も少なくなります


Index 2009年ユースワールド 第7日目(最終日)

 最終日は1レースのみ、18ノット前後の風の中、11:30に予定通り始まりました。本大会中、もっとも風のある中でレースをしました。

 日本チームは、前日に比べると皆最後のがんばりを見せ、少し順位を上げることができました。

大会は全8レースを行い、終了しました。
着艇後は、大量のチャーターボートの返却を行います。各ビルダーのスタッフは2名程度、それを現地スタッフが手伝いチェックを行います。この作業は見るからに大変そうでした。返却準備の仕方が悪いチームは、チェックの順番を後回しにされコーチが選手をしかっているシーンもありました。日本チームは、丁寧に片付けたのでスムーズにチェックを受けられ、問題なく返却を終えました。

 夕方、クラブハウスの特設ステージで表彰式が行われました。RS:Xの女子は香港が優勝、ラジアルの女子はシンガポールが優勝、420女子はシンガポールが3位とアジア勢が表彰台に多く上がりました。420の女子の優勝は地元ブラジルの選手でした。その父親は今年のVolvo Ocean Raceのチャンピオンスキッパーであるトーベン・グラエルで、父が娘に表彰するというセッティングがありました。ブラジルの現地スタッフにとってはもっとも誇らしい瞬間だったと思います。総合優勝のVolvo Trophyはフランスチームが勝ち取りました。強豪国であることを再認識させられました。

 当初、ダブルハンドの420では日本チームも戦えると期待し現地入りしました。しかしながら、結果は下位グループに甘んじることになってしまいました。逆に、シングルハンドのラジアル級女子では、近年の結果を大きく上回ることができました。多田選手は、来年また再挑戦できる年齢です。今回の大会で良い感触をつかんでいる様子なので、来年こそは勝負をしに行きたいものです。

 来年の大会は、トルコのイスタンブールです。今回の実施種目に、29erを加え8種目で競われます。我々はこの大会で戦える選手の育成を目指し、さらなる強化を図って行きたいと考えています。

 最後に、大会期間中このレポートを読んでいただきご声援とご協力をいただいた方々に感謝を申し上げます。ありがとうございました。

【最終成績】
・ラジアル女子   1位:シンガポール 2位:デンマーク 3位:フランス
 多田 桃子   (18、5、35、34、17、12、(OCS)、26)  22位/38艇中

・420男子     1位:イギリス 2位:フランス 3位:チリ  稲葉・峰 組  (26、DNF、5、16、22、26、23、24)  22位/31艇中

・420女子     1位:ブラジル 2位:イタリア 3位:シンガポール  山口・牟田 組  (23、(DNF)、OCS、19、21、19、18、21) 22位/24艇中
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日の丸で同じことをやりたいです
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日本チーム、健闘しました
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チャーターボートの管理を見ても組織力の高さがうかがえます
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Volvo Trophyを手にするフランスチーム


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