日本セーリング連盟


国土交通省への提案(中間報告)




平成13年9月20日


国土交通省 殿

日本セーリング連盟 理事
富田 稔

国土交通省への提案
小型船舶操縦士免許について
 


外洋ヨットにおける船舶の所有者の責任についての解釈
日本セーリング連盟には、艇の運行の責任を定める基準と艇の安全基準を定める特別規定(=安全規定のこと) が有ります、そこに記述される艇の所有者の責任についての定義は
艇と乗組員の安全の確保はオーナーまたはオーナー代理の避けられない責任であり、 オーナーは所有艇を最良の状態で十分な航行性を有するように保持し、荒天の海にも対抗できる体力と 適切なトレーニングを積んだ、経験十分な乗員を乗り込ませるよう万全を尽くさねばならない。オーナー は…全ての備品を確実に装備し、又安全備品が適切に維持格納されて、その使用方法と置き場所を乗員に 熟知させておかなければならない。

参考として船舶職員法 第18条には以下のように記述されています。
船舶所有者は、その船舶に船舶の用途、航行する区域、大きさ、推進機関出力その他の船舶の航行の安全に 関する事項を考慮し政令で定める船舶職員として船舶に乗り組ますべき者に関する基準に従い海技免状を有 する海技従事者を乗り組ませなければならない。

船長(ヨットでは艇長と称する)の責任の解釈
船舶がおかれる自然の環境は陸上の車の運転とは全く異なる環境であり、大きな違いは船舶の場合ほとんどの ケースで数秒もしくは秒の何分の一かの判断や瞬時の操船の技術を常に必要とするものではない。むしろもっと遠く 、もしくは予測判断や予測に対する正確性を求められるものである。さらに気象状況や海事法令に精通している事、 さらに誰も見ていないという状況下でのマナーという事も重要な用件となります。

たとえ、共同オーナーであっても、実際に乗るとき艇長は1名決められるべきであり、艇長に任命されたときはその責任を自覚し、 自分と乗員と船を合わせた総合力を過大または過小評価せず冷静に判断して運行するのが艇長である。仮に不足した知識が有れば それを補うクルーを乗船させることもできる。それも不可能なら 気象条件を考慮しその範囲内で出航を見合わせたりもできる…。
(舵誌 1998年5月艇長の条件)

船員法によって定められる船長(艇長)の職責もしくは法的責任は、その船舶に乗船する免許取得者 (前出船舶職員法18条により)に課せられる一方、ヨット・モーターボートにおいては実際の長年の経験と知識、 人間的資質、海への適用性などから免許取得者より下級資格者、のほうが有能である場合が存在し、「資格者が1名乗って いれば良いという事態」を生じ、法の趣旨が小型船舶免許制度で曲げられる結果となっている場合も見られます。

本来は船長の免許はその能力に裏打ちされたものでないといけません。現状では免許取得のための講習で入手し取得後 も何年も乗船しない、乗っても年数回では、本来の船長の資格・職責を維持できるわけがありません。 この構造的欠陥を少しでも排除するためには、乗船経歴の概念を小型船舶の免許にも導入したら如何かと考えます。
少なくとも公的なマリーナ(例えばマリーナビーチ協会 会員マリーナ)国土交通省の管轄である日本セーリング連盟、 漁業組合などの機関からの一定の乗船履歴を証する方法などによって、船長の資格を規定する事が可能であると考えます。



本来外洋ヨット(帆船)については、航行速度が極端に遅いため一定の航海距離を目指すためには、日中の航海のみならず、 夜間を航行することも必要になります。その場合には乗員につき交代当直制をとることが普通で、その場合交代乗員には 操縦に関する委任を行うわけですが、難しい状況については船長に判断を仰ぐのが当たり前であります。もちろん船長の 指揮監督の上で下級乗員に対する実務的指導のための操船が行われることもしばしばであります。救命胴衣の着用について の判断も夜間航行では常識であり(着けるなといわれてもつけます)少しでも、波浪が高ければ、ハーネスの着用が当然の 世界です。規制で着用する次元ではなく、乗員の技量、経験、体調(船酔い)などで、船長が全て判断すべきものであると 考えます。ただし通常13歳未満(小学生以下)の子供に対して着用を義務付ける、このあたりは常識と考えます。 又飲酒運転に関しても同様であり先に述べた瞬時の判断を必要とすることの少ない巡航においては、「見張り」 を十分可能とする量を飲むことには特に問題を感じておりません。荒天において足元が確保できないほどに酒を飲める人 も少ないと思いますし、その場合ハーネスまで着用するのが当たり前と考えております。



船舶操縦免許に関する提案

小型船舶船長免許 1級 (仮称)
現小型船舶操縦1級免許の延長 20トン未満、40(現20)海里以上 全ての海域(船舶職員法 施行規則第60条)

この資格をもっている船長が乗り込む船舶においてはその船舶の操縦について、船長の指揮、監督の上で 航行免許無資格者にも操縦させることができる。
ただし、船員法 第10条に従う。

適用
1)船員法 第8条 発航前に船舶が航海に支障ないかどうかその他航海に必要な準備が整っているか、いないかの検査をしなければならない
2)船員法 第126条 1項の罰則
3)船員法 施行規則 第2条 2(発航前点検)
4)船員法 第7条から第14条の4、除く第9条 (船長の職務および権限)
5)船員法 第123条〜125条までの罰則の除外

この小型船舶船長免許1級(仮称)を受けようとするものは、小型船舶船長免許2級(仮称)を所持し、 乗船履歴200時間以上(案)の有するものについて、実技試験を免除して与えられる。

1)乗船履歴については、ヨットにおいては航海日誌に基づく、日本セーリング連盟(加盟団体等)等 の証書をもって代える事ができる。モーターボートにおいては、航海日誌に基づく各マリーナビーチ協会 会員マリーナ等の証明をもって代える事ができる。(船舶職員法 13条の2 5項 の変更)
2)現1級小型船舶操縦士の免許を有するものは、この法令の発行と同時に小型船舶船長免許1級(仮称)に移行する。
3)この変更は法令の発行から2年の余裕を持って施行される(案)

飲酒等については、航海当直基準に従い、十分に配慮する。
総則 2(4)航海当直をすべ機職務に有るものが酒気を帯びていないこと。

13歳未満乗船者のライフジャケットの着用を義務付ける

小型船舶船長免許 2級 (仮称)
現小型船舶操縦免許2級、3級の延長 20トン未満、40(現20)海里以下

この資格をもっている船長が乗り込む船舶においてはその船舶の操縦について、船長の指揮、監督の上で 航行免許無資格者にも操縦させることができる。
適用については 小型船舶船長免許1級(仮称)と同じ
ただし、新規資格習得に乗船履歴を必要としない、(船舶職員法13条の2 5項の適用除外)
経過処置として発行から3年の間、現 小型船舶4級免許所持者で乗船履歴100時間(案)を証して 移行することができる。

沿岸小型船舶操縦免許
主としてモーターボート等の小型船舶で5トン以下、5海里以内の航行範囲で、小型船舶の操縦について 自らが操縦にあたらねばならない。
この免許者による操縦される船舶においては、13歳未満乗船者のライフジャケットの着用は義務付け られる。
この操縦士免許で船舶の操縦にあたる場合、飲酒運転についての制限は吸気1リットルにつき0.5mg 以内(自動車の2倍)とする

海岸小型船舶操縦免許
現5級および5級湖水河川の免許適用範囲でPWCのみの免許として発行する。
操縦は自らが操縦にあたらねばならない。
乗員全員のライフジャケットの着用を義務付ける
操縦者の飲酒運転についての制限は吸気 1リットルにつき0.25mg以内(自動車と同じ)とする
日没後30分、日の出前30分の操縦を制限する

現在の小型船舶操縦士免許1級から5級を廃止する。

共通事項

1)迷惑操船
港則法 第16条 の変更
港則法 第44条 罰則の変更 第16条を追加
●港湾内および湾内航路においては全ての船舶は舵の効きを維持できる最小限の速力で操縦しなければ ならない。
ただし、諸外国で見られる、速度に関する航路標識の設置をきめ細かく行う。

●海水浴場の外200メートル(案)範囲内以内、ダイバー・遊泳者のいる100メートル(案)範囲内、 他の船舶の航行する200メートル(案)範囲内では高速航行(10ノット以上)もしくはジグザグ航走などの 迷惑行為をしてはならない。

2)出航前点検
●資格区分の船長免許1級2級(仮称)の免許を所持する船長、および沿岸小型船舶操縦免許(仮称)、 を所持する操船者はいずれの船舶に乗り組む場合においても、出航前点検の義務を負うこととし、 船員法に基づく罰則を適用する。